【10月17日 AFP】サッカーW杯カタール大会(2022 World Cup)の開催を目前に控え、イタリアの出版社パニーニ(Panini)が世界150か国で発売するサッカー選手のステッカーが、南米でかつてない熱狂的な人気を集めている。大枚をはたく人もいれば、まだ暗いうちから店に並ぶ人も。非公式の交換会も盛況だ。

 すべてはサッカー愛に根ざした情熱を満たすため。今大会は、35歳を迎えたアルゼンチンのスター選手リオネル・メッシ(Lionel Messi)にとって最後のW杯になるかもしれず、南米チームの20年ぶり優勝への期待も相まって、ステッカー収集熱が高まっているようだ。

「有り金のほとんどをステッカーにつぎ込んでいる。自分の稼ぎも、借りた分もね」と語るのは、アルゼンチン人のヒルダ・ロサダさん(68)。700枚近いステッカーを集めてアルバムを完成させるため、ブエノスアイレスの販売店に早朝5時から並んだ。完成させるべきアルバムは、自分と孫の2冊分だ。

 アルゼンチンでは何日も前からステッカーが品薄で、不満を募らせる販売店とパニーニとの間を取り持とうと、ついに政府が介入した。ロサダさんが並んでいたのは「今、ステッカーを買える数少ない店の一つ」。開店を待つコレクターが長い列をつくった。

 家族は苦言を呈するが、ロサダさんはどこ吹く風。ひたすら収集を楽しんでいる。「幼い少女」だった頃から4年ごとにサッカーカードを集めてきた。

 ただ、インフレが年率56%まで急進する中でのステッカー収集は容易ではない。1パック当たりの価格は2018年ロシア大会以降、値上がりを続けている。

 もっとも、販売店を営むレイラ・エドゥルさんは「アルゼンチンはだいたい経済危機だ」と肩をすくめる。「でも、ステッカーがあれば、どこからともなくお金が湧いてくる」