【10月16日 Xinhua News】中国の科学者が重慶市(Chongqing)と貴州省(Guizhou)のシルル紀初期(約4億4千万年前)の地層でこのほど発見した「重慶特異埋蔵化石群(化石鉱脈)」「貴州石阡(せきせん)化石群」から、顎口類(がっこうるい、顎を持つ脊椎動物)の勃興と最初期の分化に関する確かな証拠が得られた。一連の新発見は、顎口類の初期の進化に対する従来の認識を一新した。

 研究は、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所の朱敏(Zhu Min)院士(アカデミー会員)の研究チームが完成させ、関連論文4編が9月28日、英科学誌「ネイチャー」オンライン版に掲載された。

 ヒトを含めた地球上に現存する脊椎動物の99・8%は顎を持っている。顎口類の出現と勃興は、脊椎動物の進化の歴史で最も重要な飛躍の一つといえる。ただ、この飛躍がいつ、どこで、どのように起きたのかについては、科学界でも長期にわたり古生物学上の証拠を得ることができず、少なくとも3千万年の空白が存在していた。

 その空白を埋めたのが重慶と貴州で発見された化石層だった。貴州石阡化石群には、保存状態の良い顎口類の微化石(顕微鏡でしか確認の出来ない数ミリ以下の化石)が多数含まれており、重慶特異埋蔵化石群の古代魚の化石は、数と種類が多いだけでなく、美しい状態で保存されていた。研究チームは、高精度コンピューター断層撮影装置(CT)や性状(性質・状態)のビッグデータ解析などの新技術と新手法を用い、最古の顎口類の歯や頭部など身体構造と解剖学に関する情報を初めて公開した。

 貴州で見つかった双列黔歯魚(Qianodus duplicis)のらせん状歯列は、顎口類の歯の最古の化石証拠を1400万年さかのぼらせた。重慶で見つかった蠕紋沈氏棘魚(Shenacanthus vermiformis)は、これまでに発見された保存状態の良い軟骨魚類化石の中で最古のものとされ、サメが「よろいを身につけた(硬い皮膚を持つ)」祖先から進化したことを裏付けた。また、同じく重慶で見つかった奇跡秀山魚(Xiushanosteus mirabilis)は、複数の板皮綱(シルル紀に出現し、すでに絶滅した古代魚類)の特徴が混ざり合っており、顎口類の系統樹の根幹をなすグループの起源や、脊椎動物の頭蓋骨の進化を探求する上で貴重な資料となった。

 朱氏は今回の発見について、シルル紀の魚類、中でも顎口類の様相が初めて一定の規模で示されたと指摘。遅くとも4億4千万年前には中国の華南地域ですでに各種顎口類が繁栄していたことや、シルル紀後期に多様で大型の顎口類が出現し、地球全体に拡散し始めたことなど、初期の顎口類の勃興過程が明らかになったと説明した。(c)Xinhua News/AFPBB News