【10月8日 AFP】ロシア軍から東部の要衝リマン(Lyman)を奪還したばかりのウクライナ空挺(くうてい)部隊は、疲れ果て、泥にまみれながら、戦車から青と黄色の国旗を掲げていた。

 戦車の正面と後部には、ウクライナ軍が東部と南部で数千平方キロに及ぶ領土の奪還に成功した猛攻のシンボルとして採用した大きな白い十字のマークが描かれていた。

「大変だった、本当に大変だった」。空挺兵のオレクサンドルさんは、リマン奪還戦についてこう振り返った。「他に選択肢はなかった。私たちは自国の領土を守っている」。前線に立つウクライナ兵は、安全上の理由から姓を名乗ることはほとんどない。

 リマンは、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が最近併合した4州の一つであるドネツク(Donetsk)州にある。プーチン氏は先月、敗北の悪循環を断ち切るために数十万人の予備兵動員を発表したが、オレクサンドルさんはロシア軍の増派に対する不安を示さなかった。

「何人いようと、やつらは私たちと本気で戦う気はない」。ロシア兵を待ち受けているのは「死のみ」で、「運が良くても捕虜になる」と語った。

■ロシア軍を「追い払う」

 ひげを生やし、前腕や胸に青いリボンをつけた空挺兵たちは、リマン近郊の田舎道で休止していた。

 匿名を条件に取材に応じた若い兵士は、「私たちは疲れ果てている」と認めた。疲弊した様子を見せながらも、勝利のVサインを出す兵士もいれば、手を挙げて記者にあいさつする兵士もいた。

「少し休んだら、さらに前進する」。同じ兵士は、仲間と一緒にほほ笑みながら語った。「やつらを追い払ってみせる」

 リマンから5キロ弱離れたドロブイシェベ(Drobysheve)近くには、爆発で頭部が吹き飛ばされたとみられるロシア兵の遺体が地面に放置されていた。付近では、ウクライナの地雷除去作業員が金属探知機を片手に森の中をゆっくりと進んでいた。

 ドロブイシェベでは、慈善団体が住民を避難させていた。夫と共に避難用車両で待機していたワレンチナさん(78)は目に涙を浮かべ、「砲撃があって避難したが、どうしても家に帰りたかったため戻ってきた。でも、家は住めない状態だった」と説明。首都キーウに向かう予定だと語った。

 レオニードさん(65)は隣人たちに別れを告げに来たが、一緒に避難はしないと誓った。「私たちはここにとどまる。私たちの土地に」 (c)AFP/Anatoly Stepanov