【10月7日 AFP】タイ東北部ノンブアランプー(Nong Bua Lam Phu)県で6日、子ども22人が殺害された保育施設。悲しみに暮れる家族らが1人ずつ、入り口前の階段に一輪の白いバラの花を置いていく。

 頭を垂れて祈る人もいれば、抱き合って慰め合う人もいる。亡くなった息子のお気に入りだった赤と黄色の毛布と、まだ半分ミルクが入っている哺乳瓶を抱きしめ、慰めようがないほど泣く母親の姿もあった。

 緑豊かな村の外れにある施設の外には、大勢の親族らが集まった。皆、心に傷を負っている。

 事件を起こしたパンヤー・カムラープ(Panya Khamrab)容疑者は警察官だったが、薬物使用により警察を解雇された。銃と刃物で武装し、保育施設に押し入ると、子ども22人を含む35人を殺害。その後、自宅で妻と子どもを殺した上、自殺した。タイ史上最悪の大量殺人事件となった。

 ナリワン・ドゥアンゴットさん(21)は、2歳のおいのカムラムちゃんを失った。カムラムちゃんの母パタニー・プラワンナーさん(19)を慰めていた。

 ナリワンさんはAFPの取材に対し「亡くなる前はピザを食べたがっていた。なんでピザを買ってあげなかったのかと後悔している」と語った。

「前夜はとてもむずがっていて、両親と妹と一緒に寝たいと言ってきた」「あれが最後に過ごした夜になるなんて。信じられない」

 カムラムちゃんの家族は、近所の人から襲撃があったと聞いた。

 パニターさんと夫はカムラムちゃんを捜すため、バイクで施設に駆け付け、最悪の事態が起こったことを知った。「理解できない」と、パニターさんは生後11か月の娘カンターちゃんを抱き、涙をこらえながら語った。

 現場から一番近い病院には、集中治療室(ICU)の前で、食料やおむつなどを持った親族が待っていた。

 保育施設には大勢が訪れ、小さな村は悲しみで一つになった。

 2日前まで子どもたちが楽しそうに遊んでいた場所には、ショック状態の大人が座り込んでいる。耐え難いほどの沈黙は、時折小さな泣き声で破られる。

 ブアライ・タノントンさん(51)は、3歳になる2人の孫を失った。「とてもショックで恐ろしい。眠れなかった。私の2人の孫が犠牲になるなんて思いもよらなかった」と言いながら、取り乱している娘の肩を抱いた。

 カムジャット・プラインターさんは、容疑者の男はこの辺りで知られた存在だったと語る。「誰もが知っていた。元警察官で、いいやつだった。でも、後で覚せい剤中毒になってしまったこともみんな知っていた」

「ここは小さな共同体で、誰もが知り合いだ。みんな家族みたいなものだ。ここで死んだ子どもも3、4人は知っていた」 (c)AFP/Montira Rungjirajittranon and Rose Troup Buchanan