■「戦争したくなければ、戦争に備えよ」

 自衛隊の存在が与那国島に変化ともたらしていることについては、賛成派、反対派ともに認めるところだ。

 それは、巨大なレーダー施設が建設され星空と競うように点滅しているというだけではない。昨年稼働を開始した待望のごみ焼却施設は、予算のほぼ全額を防衛省が負担している。また、駐屯地の賃貸料が入ることで島の学校の給食費は無償化された。

 与那国島には高校がなく、雇用も限られている。台湾との活発な交易が戦後に絶たれて以降、何十年も衰退の一途をたどってきた。

 現在、与那国町の歳入の5分の1を占めるのは、自衛隊関係者が納める税金だ。しかし、誰もがこの変化を肯定的に捉えているわけではない。町議会議員の田里千代基(Chiyoki Tasato)氏は長い間、自衛隊の誘致に反対してきた。

 田里氏は、自衛隊員やその家族が町議会選挙に投票することで、地元の政策に影響を与えていることに疑問を呈する。そして自衛隊が島の経済に与える影響によって、町民が自由に発言しにくくなっていると主張する。

「反対、反対という人はいなくなってきていますね、実際は。(声を)上げにくくなってきていますよね。明日の飯をどうするかっていうことに追われていますから、みんな」

 だが糸数町長から見れば、基地がもたらす経済効果に異論はない。また治安情勢を考えると、自衛隊の駐屯が必要なのは明らかだと話す。

「平和が欲しければ、戦争したくなければ、戦争に備えなさい、ということです」 (c)AFP/Mathias CENA