【10月8日 AFP】「この国にナチスはいません」──第2次世界大戦(World War II)中のナチス・ドイツ(Nazi)によるホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)を生き延びたユダヤ系ウクライナ人のロマン・ゲルシュタインさん(83)はきっぱりと答えた。

 ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の支持者は、ウクライナ東部ではロシア語話者に対する「ジェノサイド(集団殺害)」というナチス・ドイツ同然の弾圧が行われており、だからこそ「非ナチ化」が必要だと主張している。

 ゲルシュタインさんは、この主張を真っ向から否定する。

 ウクライナ中部クリビーリフ(Kryvyi Rig)のシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)でAFPの取材に応じたゲルシュタインさんは、丸眼鏡の奥で目を光らせ、自分は本物のナチスから逃げなければならなかったと語る。

「それどころか私は、チョルノービリ(チェルノブイリ、Chernobyl)から2回避難した数少ない人間の一人なんです」

 1度目は1941年、当時ソ連を構成する共和国の一つであったウクライナの故郷チョルノービリがドイツに占領された時。2度目は45年後の1986年、世界最悪の原発事故が起きた時だ。

 1939年生まれのゲルシュタインさんが2歳の時、父親はナチスから逃れるために家族を首都キーウ行きの船に乗せた。キーウからは一家でタジキスタン行きの列車に乗った。

 やがてチョルノービリに戻った時、ユダヤ人社会は消えていた。「避難しなかった人々は、永遠に地下で眠っています」とゲルシュタインさん。「700人はいました…女性と子ども、老人たちです」