【10月9日 AFP】ロシアの戦線から程近いウクライナ東部で、ウクライナ兵数人が野営していた。彼らが待っていたのは、BM21「グラート(Grad)」自走多連装ロケット砲の発射命令だ。

 グラートは旧ソ連で1960年代に開発されたもので、第2次世界大戦(World War II)中にドイツ軍からヨシフ・スターリン(Joseph Stalin)にちなんで「スターリンのオルガン」と呼ばれて恐れられた多連装ロケット砲の後継兵器だ。40連装の122ミリロケット砲発射機で、最大で20キロ離れた標的を攻撃することができる。

 司令部からの命令が下ると、兵士は武器とヘルメット、防弾チョッキをつかみ、グラートが搭載されているトラックの方に駆け出した。ディーゼルエンジンの音をとどろかせながら、猛スピードで野原を突っ走る。

 そして急停止すると、ロケットランチャーを上向きにして旋回させ、最終調整を行った。

 トラックの停車からわずか3分。ロシア語で「あられ・ひょう」を意味するグラートのロケット弾5発が、ごう音と共に連射された。

 AFPの取材に応じた23歳の兵士は、指令を受けると「出発し、標的を狙って(野営地に)戻ります」と語った。何を標的にしたかは明らかにしなかった。

 60年前に開発されたグラートは、現代の紛争でも有用なのだろうか。「役に立つかどうかは使う側の腕によります」と、この兵士は語った。

「この兵器が今でも効果的なのは、射程が長く、多くの標的を攻撃できるからです」 (c)AFP/Emmanuel PARISSE