【9月30日 AFP】ロシアから欧州へ天然ガスを供給する海底パイプライン「ノルドストリーム(Nord Stream)」が損傷しガス漏れが生じている問題で、科学者は、大気中に放出されるメタンガスが気候変動に及ぼす影響は若干にとどまると指摘している。ただ、今回の件は化石燃料がもたらす温室効果ガス排出リスクを明確に浮き彫りにしたとの見方を示した。

 欧州連合(EU)は、「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」で相次いだ損傷は「意図的な行為」によるものだとみている。稼働を停止していてもパイプライン内にはガスが残っており、デンマーク当局は、少なくとも1週間は漏出が続くと予想している。

 米アリゾナ(Arizona)州にある惑星科学研究所(Planetary Science Institute)の上級研究員、ジェフリー・カーゲル(Jeffrey Kargel)氏は、今回の「憂慮すべき」ガス漏れが、「意図的に引き起こされたのなら茶番そのもので、環境犯罪だ」と述べた。

 ただ、「パイプラインからは明らかに多くのガスが失われているが、これはいわゆる気候大災害ではない」と同氏は言う。

■どのようなガスが漏れているのか?

 天然ガスの主な成分はメタンだ。大気中の含有量は二酸化炭素(CO2)よりもはるかに少ないが、これまで地球の気温を上昇させた要因の約30%はメタンだとされている。100年というタイムスケールで見るとCO2の約28倍強力だ。

 しかし、CO2が何百年、何千年と大気中にとどまるのに対し、メタンは10年ほどで消滅する。

 英マンチェスター大学(University of Manchester)のグラント・アレン(Grant Allen)教授(大気物理学)は、パイプラインから放出されたメタンの一部は水中で酸化してCO2になるとした上で、「だが、天然ガスの噴出の激しさを見ると、ガスの大部分はメタンのまま海面に到達するだろう」と語った。