■漏えいの規模は?

 専門家らはパイプライン内のガス残存量の算出を試みているが、これには多くの不確実性が伴う。

 アレン教授は、ノルドストリーム2に最大で1億7700万立方メートルの天然ガスが残っているとの推計を紹介。英国の12万4000世帯が1年間に使用する天然ガスに匹敵するという。「これは決して少ないガス量ではなく、大気中への温室効果ガスの無謀な放出を意味する」と述べた。

 国際環境NGOグリーンピース(Greenpeace)は同様の数字を用いて、今回のガス漏出による排出量はデンマークの温室効果ガス総排出量の8か月分に相当するとの概算を発表した。

 一方、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)工学部化学工学科のポール・バルカム(Paul Balcombe)名誉講師は、パイプライン内のガス残量を約1億5000万~3億立方メートルと推定する。

 バルカム氏は英サイエンスメディアセンター(Science Media Centre)に対し、「パイプラインの中身がすべて放出されることはないだろう」との見方を示しつつ、もしもパイプラインのうち1本が完全に空になったら、米アライソ渓谷(Aliso Canyon)で2015年に起きた同国史上最悪のメタン漏出事故の2倍の規模になると話した。

■世界の排出量との比較は?

 英リーズ大学(University of Leeds)プリーストリー国際気候センター(Priestley International Centre for Climate)のピアーズ・フォースター(Piers Forster)所長は、今回の漏出が「直ちに強力な温暖化効果をもたらし、大気の質を低下させる」のは確実だと述べた。

 しかし、世界ではガス供給全体の約10%が整備の不十分な供給網からの日々の漏出によって失われており、それと比較すればノルドストリームからの漏出の影響は小さい。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、世界全体で昨年1年間に化石燃料部門の操業中に漏出したメタンの量は、欧州の電力セクターで使用される天然ガスの全量とほぼ同じだったとの推計を出している。

 ただ、専門家は、今回の漏出によって、気候変動対策とエネルギー安全保障の両面から、汚染を引き起こす化石燃料からの転換を早急に行う必要性がいっそう浮き彫りになったと指摘している。(c)AFP/Kelly MACNAMARA