【10月1日 AFP】その写真の中で、アナスタシアさんとエリザベータさんの父親(43)は軍服をスマートに着こなし、微笑を浮かべて子犬を抱いている。だが、もはやその面影はない。半年前にウクライナに出征し、「壊れて」戻ってきた。

「父は最も激しい戦闘に参加し、砲撃を受け、あらゆる経験をした」とエリザベータさんはAFPに語った。「6時間砲撃にさらされると人が変わってしまうと父は言っている。それに、とても多くの死者を見た。父には医療の助けが必要だ」

 18歳の双子の姉妹の元に父親が戦場から持ち帰った心の傷は、ウクライナ侵攻の正当性をめぐって対立する家族間の緊張を高めている。一家の問題は、ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)にとっては都合の悪い、より広範な問題を示唆している。ウクライナ侵攻がロシア国内に過酷な犠牲を強いており、家族を引き裂く例もあるという現実だ。

 エリザベータさんは、トラウマを抱えて帰国する軍人は今後ますます増えるとみている。

 姉妹が暮らすのは、エストニア国境に近い人口20万人の中世都市プスコフ(Pskov)。市内には、父親が所属する第76親衛空挺(くうてい)師団(76th Guards Air Assault Division)の基地がある。

 今年1月、父親は「ベラルーシで軍事演習があるから数日留守にする」と娘たちに告げて家を出て、6か月間戻らなかった。