【9月28日 東方新報】企業の事業戦略や財務・会計、問題解決など経営実務に直結するスキルを学ぶMBA(経営学修士)。主に社会人を対象とするMBAプログラムといえば、ハーバード・ビジネス・スクールやスタンフォード大学(Stanford University)経営大学院など欧米の大学院を思い浮かべる人が多いだろうが、近年は中国勢の躍進も目立っている。

 英国のフィナンシャル・タイムズ(Financial Times)が発表した「グローバルMBAランキング2022」では、中国政府と欧州連合(EU)のジョイントベンチャーによって1994年に上海に設立されたビジネススクール「中欧国際工商学院(CEIBS)」が16位にランクイン。昨年度まで4年連続トップ10に入っていたのに比べてランキングを落としたが、今年も上位をキープしている。このほか32位に復旦大学(Fudan University)、42位に北京大学(Peking University)、58位に上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)、60位に清華大学(Tsinghua University)、65位に同済大学(Tongji University)と、中国のMBAプログラムが着々と実力をつけてきている。

 中国のMBAプログラムは1991年にスタート。当初の開講大学は9校、学生数100人余りだったが、現在はMBAプログラムを持つ教育機関は200校を超え、MBA志願者は25万人に増えた。企業に勤務しながらMBAプログラムを学ぶパートタイム形式、企業を退職して学ぶフルタイム形式、企業を休職して学ぶ中間型のモジュラー形式などさまざまな形で受講熱は高まっている。

 MBA取得の魅力の一つは、やはりキャリアアップと転職に伴う昇給だ。上海交通大学の安泰経済管理学院は9年連続で世界のトップ100入りしている中国本土唯一のビジネススクールで、3か月間での雇用は100%、昇給率は160%に達する。

 1991年に開講した9校の一つで中国MBAの草分け的存在の復旦大学は中国大陸、香港、台北、ニューヨーク、シンガポールにアルムナイ(卒業生)オフィスを持ち、MBA取得者は世界に約5万人を数えるアルムナイネットワークの一員に加わる。

 各校では大手中国企業の幹部として働く卒業生がMBA生のメンターとなって学習をサポートし、自社への就職をあっせんするシステムもできている。MBA取得者は大学新卒者と同じ扱いを受け、受講した都市の戸籍を得られる場合もあるという中国特有の事情もある。

 ただ、最近の中国MBAで話題となっているのは授業料の高騰だ。上海交通大学安泰経済管理学院の授業料(パートタイム)は45万8000元(約916万円)から2023年は51万8000元(約1037万円)に値上げする。IT企業が集積する深セン市(Shenzhen)の深セン大学(Shenzhen University)は19万8000元(約396万円)から29万8000元(約596万円)へ一気に50%も引き上げる。復旦大学は49万9800元(約1000万円)と据え置きだが、すでに2020年の41万9800元(約840万円)から値上げしている。来年の授業料を発表していない大学も多いため、値上げが続く可能性がある。

 ある大学の関係者は「授業料値上げには費用計算書を所轄官庁に提出して承認を得る必要があるため、勝手につり上げるわけではない」と説明。「他大学との競争でプログラムの魅力を高めるため、欧米の有名大学教授や多国籍企業の幹部を教師として招いている。メタバースなどの新しいカリキュラムを取り入れる必要もある。卒業生向けの無償のサポートサービスもあるため、卒業生が増えれば自然と費用も増える」と事情を語る。

 欧米のビジネススクールに比べて授業料が低いとして、日本など海外から中国の大学でMBAを取得する人も増えているが、中国のMBAも次第に「高根の花」になりつつある。(c)東方新報/AFPBB News