【9月28日 CNS】インターネットを通じて動画やビデオ通話などを使って学ぶ「オンライン学習」。自分の都合に合わせて時間や場所を選べて効率よく学べることから、新型コロナの感染の影響もあり、何かと忙しい社会人の学び直しの場として広がりをみせている。中国でも同様だが、ある講座が注目を集めている。

 その講座とは「読み・書き」を教えるというもの。オンライン学習の運営サイトで「大人の読み書き」と検索すると、ライブ配信による講座が数百件も表示されるほど多くのコースが存在している。

 李紅(Li Hong)さん(52)は生徒の1人。李さんは建設業で働いていて、1日あたり11時間もの勤務を終えるとスマートフォンで「読み・書き」を熱心に勉強する学生になる。

 この講座のクラスメートは60代や70代のシニア層で、中には30代や40代もいる。職業は李さんのような建設業のほか、農業など様々だ。スマートフォンという「手のひらサイズの黒板」に向かって、集中して授業を受ける。

 中国の第7回国勢調査によると、「読み・書き」ができない人は、14億人を超える人口の2.67%に上る。また、「中国統計年鑑(2021年版)」によると、「読み・書き」ができない人のうち女性が75%を占めている。教育を受けられなかったのは、遠隔地から親の出稼ぎで都会に来たものの貧しいため学校に通うお金がなかったことや、孤児となって親戚の家に引き取られたあと学校に通うことができなったことなどが理由だという。

「読み・書き」を教える講座は、その多くが幼児教育に携わってきたような個人が運営している。その草分け的な存在が丁小花(Ding Xiaohua)さん。オンライン学習の運営サイトで、「読み・書き」ができない人向けに、最初に配信を始めたうちの1人だ。丁さんは生徒たちにピンイン、手書き、携帯テキストのタイピング、日常生活でよく使われるさまざまなフレーズを教えている。

 なぜこの講座を始めたのか、それは丁さんの両親が「読み・書き」できなかったことだという。丁さんは会計の仕事をしていたが、3年前に子供の世話に専念するため仕事を辞めた。自由な時間が増え、遠く離れて暮らす両親と会話する機会が多くなったことを契機に、両親と同じような人がたくさんいることを知ったという。次第に「読み・書き」を教えたいという思いが強くなりライブ配信による講座をスタート。最初は駅や銀行、病院などで日常に使う言葉だけを教えていたが、その後、中国全土から受講を希望する人が増え、本格的にピンインを教えるようになった。

 この講座の「卒業」基準は「小学5~6年生レベル」に設定され、約3000語の漢字の読み書きができるようになる。この約3000語を使えるようになると、仕事上で書類のやりとりができるようになるほか、役所への届け出や病院での手続きができたり、オンラインショッピングも利用できるようになったりする。

 中国でも日々のコミュニケーションはチャットアプリとなった今、受講生の李さんの一番の幸せは、毎日、朝、昼、晩、娘に「食事したか?」とメッセージを送ることだという。(c)CNS-中国青年報/JCM/AFPBB News