【9月26日 AFP】背中をナイフで刺され、ロシア国歌を毎朝歌わされた──。ウクライナ東部でロシア側勢力に拘束され、先週、サウジアラビア皇太子の仲介による捕虜交換で解放された英国人男性が25日、半年間に及んだ捕虜生活について語った。

 エイデン・アスリン(Aiden Aslin)氏(28)。他の4人の英国人捕虜と共に21日に解放され、サウジの首都リヤド経由で祖国へ帰還を果たした。帰国後初のインタビューで、拷問を受け、「美しい死」を予告されたと英大衆紙サン(Sun)に明かした。

 アスリン氏は英イングランド中部ノッティンガムシャー(Nottinghamshire)州出身。2月にロシアが侵攻してきた時、ウクライナ在住で、同国海兵隊に所属していた。防衛のため戦ったが、捕虜となった。6月、東部ドネツク(Donetsk)州で親ロシア派武装勢力から、ウクライナ側の傭兵(ようへい)だとして死刑を宣告された。

 尋問中、警棒で何度も殴られた。ある時は額を殴られ、床に倒れ込んだ。尋問担当者が膝をかがめ、耳元で「私はお前に死をもたらす者だ」とロシア語で告げた。「私の背後に回り、ナイフを見せた。刺されると思った」

 アスリン氏は、背中に残った幾つもの傷痕を見せた。

「早く死にたいか、美しく死にたいか」。アスリン氏は「早く殺せ」と答えた。すると、「いいや、お前は美しい死を迎えるんだ」と返された。

■「犬よりひどい扱い」

 アスリン氏は狭い独房に監禁された。シラミとゴキブリがはい回り、日は全く当たらなかった。「犬よりひどい扱いを受けた」

 ロシア国歌を延々と聞かされた。立って歌うよう命じられた。従わなければ、また殴られた。尋問のため独房の扉が開けられるたび、「ロシアに栄光あれ」と叫ばされた。

 アスリン氏は26日、ツイッター(Twitter)にこう書き込んだ。「6か月間、ロシア国歌を毎朝歌うよう強制された。今度はもう少し良いものに触れたい。ウクライナ国歌を歌えるようになりたい」 (c)AFP