■再値上げも

 チーズ生産者団体AFTAlpによると、数十軒の酪農家は、冬用に貯蔵している飼料に手を付け始めているが、地域の乳製品の生産量は、昨年と比べて15%減少している。

 ジャンリュック・デュクロ会長は「状況は厳しい。過去にも干ばつはあったが、今回はフランスやイタリアなど欧州の全域にわたって起きている」と訴える。

 デュクロ氏一家は牧場を経営し、牛200頭以上を飼育してエメンタールチーズや食肉を生産している。

 ロシアのウクライナ侵攻以降、飼料やガス、電気のコスト上昇は、投機的な動きや買いだめを招いて悪循環につながり、今後数か月にわたって酪農家に悪影響を与えるのではないかとデュクロ氏は懸念している。

「サボワの生産物の値上げを余儀なくされたが、干ばつの影響によるコスト上昇をカバーするため、再び5~8%程度値上げをしなければならないと考えている」という。

 生乳を使ったチーズはバクテリアの懸念があるとして、認めていない国も多い。トーヌ(Thones)にあるルブロション協同組合の技術責任者フェリックス・ガレ氏は、そのような国々で求められる衛生に関する厳格な手順の徹底において重要な役割を果たしている。

「生産量は4~5%低下した。酪農家の中には生産量を増やしている人もおり、壊滅的な状況というわけではない」とガレ氏。「ただ、全体の生産量に影響を与えているのは事実であり、今年の冬には回復するのを願っている」と挽回に期待する。

 対応策としての値上げも、わずかしかできないという。「高品質のチーズでも、さらに値上げするのは難しい。消費者がどれだけ支払えるのかを念頭に置かなければならない」

 映像は8月22日撮影。(c)AFP/Sophie PONS