【9月23日 AFP】フォートナム・アンド・メイソン(Fortnum & Mason)の紅茶にバーバリー(Burberry)のレインコート、キャドバリー(Cadbury)のチョコレートから、ほうきやドッグフードまで──エリザベス英女王(Queen Elizabeth II)の死去に伴い、約600のブランドが「英王室御用達」のお墨付きを失う危機に直面している。

 各ブランドは現在、後継の君主チャールズ国王(King Charles III)の認定を待っている。認定を得られなければ、2年以内に王室御用達を示す紋章の使用を中止しなければならない。

 王室御用達は、高品質の何よりの証しだ。王室御用達協会(Royal Warrant Holders Association)によると、認定を受けた企業は、認定した英王族の紋章を「製品、包装、文房具、広告、建物、車両」に表示する権利を得る。

 王室御用達の売り上げへの影響を測定するのは難しいが、企業によっては強力なセールスポイントになる。

 例えば、フォートナム・アンド・メイソンは英王室と長く密接な関係を築いている。「ロイヤルブレンド(Royal Blend)」という商品は、1902年に当時の英国王エドワード7世(Edward VII)のためにブレンドされた紅茶だ。

 一方、エリザベス女王愛用のハンドバッグを1968年から提供してきた英ロウナー(Launer)は今後、王室御用達の栄誉を失ってしまうかもしれない。

■デュボネとシャンパン

 エリザベス女王に認定されたブランドの一つに、ワインをベースにした食前酒デュボネ(Dubonnet)がある。女王はデュボネとジンのカクテルを好んでいた。

 デュボネのブランドを所有する仏ペルノ・リカール(Pernod Ricard)のグローバル事業開発担当責任者クリスティアン・ポルタ(Christian Porta)氏は、世間の目から見て英女王との結びつきがそれほど強くないブランドにとって、王室御用達は「何よりもノウハウと伝統が認められること」を意味するとAFPに語った。

 ペルノ・リカール傘下では、シャンパンの「マム(Mumm)」も王室御用達の認定を受けている。

 だが、この分野には競合ブランドが多い。ボランジェ(Bollinger)、クリュッグ(Krug)、ランソン(Lanson)、ローラン・ペリエ(Laurent-Perrier)、ルイ・ロデレール(Louis Roederer)、モエ・エ・シャンドン(Moet & Chandon)、ヴーヴ・クリコ(Veuve Clicquot)も、英王室御用達のシャンパンだ。

■厳格化された基準

 ケチャップや英国人の大好きなベークドビーンズの缶詰で知られるハインツ(Heinz)など、消費者ブランドも王室御用達のマークを掲げている。

 王室御用達のお墨付きを得るのに費用はかからず、王族は競合ブランドを自由に利用できる。有効期限は5年間だが、更新基準は以前より厳しくなった。

 70年に及んだエリザベス女王の在位期間中ずっと英王室にシリアルを提供してきた米食品大手ケロッグ(Kellogg)の英国法人の広報担当者ポール・ウィーラー(Paul Wheeler)氏は、「完璧なサービスを提供するだけではだめだ」と指摘。特に、人権尊重の観点で「優良企業だと証明しなければならない」と説明した。

 だからこそ、王室御用達は、英国人が商品やサービスを選ぶ際に品質の高さの判断基準とされているのだ。(c)AFP/Joseph SOTINEL