【9月22日 AFP】世界的人気を誇るゲームシリーズ「グランド・セフト・オート(GTA)」最新作の開発中映像がインターネット上に流出し、ゲーム業界が史上最大級のハッキング事件に揺れている。

 同作は開発元の米ロックスター・ゲームス(Rockstar Games)による正式発表もされていない段階にあり、18日にソーシャルメディアに流出した映像は完成には程遠いものだった。さらに同日には米アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)が来年の発売に向け開発中の「ディアブロ4(Diablo 4)」の映像もネット上に流出した。

 ゲーム業界ではこれまでにも開発中のゲームのリークが相次いでおり、米エレクトロニック・アーツ(EA)、仏ユービーアイソフト(Ubisoft)、カプコン(Capcom)なども被害に遭ってきた。昨年には、ポーランド企業CDプロジェクトRED(CD PROJEKT RED)の「サイバーパンク2077(Cyberpunk 2077)」と「ウィッチャー3(Witcher 3)」のソースコードが盗まれる事件も起きている。

■業界人からは支援のメッセージ

 ロックスターは19日、ツイッター(Twitter)への投稿で、ハッキング被害を認めた一方で、GTAの開発は「計画通りに続行する」とし、長期的な影響はないとの見解を表明。この投稿には、100万件以上の「いいね」が付いた。

 ネット上で未完成作品の映像に対する批評が広まったことを受け、業界関係者からは開発元に対する支援のメッセージが寄せられている。

 米ゲーム開発企業ノーティー・ドッグ(Naughty Dog)のニール・ドラックマン(Neil Druckmann)氏はツイッターへの投稿で、「同胞の開発者たちへ。今は圧倒されているかもしれないが、これもいずれやむことを覚えておいてほしい。私たちはいつかあなたのゲームをプレーし、あなたの技術は評価され、リークはウィキペディア(Wikipedia)ページの脚注に追いやられる。これからも頑張って、芸術を作り続けて」との激励の言葉を送った。

 ゲーム業界では支援の輪が広まっており、ゲーム開発者たちは自分の手掛けた人気ゲームの開発途中の映像をネット上に次々と公開している。

■流出は「むしろ有利に」

 ロックスターを含むゲーム企業は開発中の作品についての情報保護を徹底しており、その理由としてはマーケティング戦略の他、ゲームは開発の最終段階になるまで形にならないことがある。

 仏エコノミストのジュリアン・ピヨ(Julien Pillot)氏はAFPに対し、GTAの映像流出は「悪いバズ(騒ぎ)」であり、発売に向けた戦略の妨げになる可能性が高いと指摘。一方で、業界情報サイト「GamesIndustry.biz」のブレンダン・シンクレア(Brendan Sinclair)氏は、ロックスターに大きな影響はないとみているが、システムのセキュリティー面で長期的な支出が必要となる可能性があると指摘した。

 だがシンクレア氏いわく、流出が必ずしも悪影響を及ぼすとは限らないという。「最終的にゲームの売り上げにそれほど影響するかは分からない。場合によっては、むしろ有利に働くかもしれない」 (c)AFP/Yassine KHIRI, Joseph BOYLE