【9月24日 AFP】現代社会のさまざまな問題から離れ、精神世界に安らぎを求める人々を魅了している場所がある──メキシコだ。心身回復のための儀式や瞑想(めいそう)、ヨガ、幻覚体験など、通常とは違う休暇を過ごすことができるリトリートに人気が集まっている。

 ビーチに直行する旅行者をよそにアーティストや知識人の間で安息の地とされているのが、首都メキシコ市から車で1時間のテポストラン(Tepoztlan)だ。ロシア人のアーニャ・ビチツカヤさん(31)はテポステコ(Tepozteco)山の環境に魅せられ、麓に住み着いた。この山は、アステカ(Aztec)王国の伝説に登場する羽を持つヘビの神ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)の生誕地とされている。

「ここの人々はリラックスしていて、より霊的です」とビチツカヤさん。「ニュースはあまり見ません。ほとんど山の中にいます」と言い、ウクライナ紛争についてもなるべく知りたくないと付け加えた。

 旅行者はヨガや瞑想ができるホリスティックセンターに滞在することもできる。

 そうしたセンターの一つ、「ルスアスル(Luz Azul)」のアリスベス・カマチョさんは「(新型コロナウイルスの)パンデミック(世界的な大流行)以降、大勢の人がテポストランに住み始めました。(中略)外国人だけでなく、エネルギーの流れがブロックされていると感じたメキシコ市の住民もです」と説明する。

 カマチョさんはセンターを訪れるゲストに自らのエネルギーやカルマ、チャクラを視覚化できる「オーラ写真」を提供している。

 他方で、幻覚体験なしではメキシコでの休暇は完結しないと考える観光客もいる。

 オアハカ(Oaxaca)州の標高2500メートル超の村、サンホセデルパシフィコ(San Jose del Pacifico)では、マジックマッシュルーム体験を提供している。団体客を案内したガイドは「内なる旅ができます」と語った。

 これ以外にも精神世界を体験できるものがある。メソアメリカ版の蒸し風呂「テマスカル」だ。

 その一つがマヤ文明のピラミッド群で有名な、南部チアパス(Chiapas)州の古代都市遺跡パレンケ(Palenque)の近くにある。高温に保たれた小屋の内部ではタンバリンの音が鳴り、香の匂いが充満している。

 テマスカルを体験したメキシコ人のバレリア・ランデロさん(30)は「すべてを吐き出すものでした。病気や悪いものを何もかもです。そして純粋でポジティブなものだけを取り込むのです」と語った。

 映像は8月に撮影。(c)AFP/Samir Tounsi