【9月24日 AFP】イタリア人天文学者ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei)が約400年前に発見した土星の輪は、小型望遠鏡で観測可能な太陽系内の天体の中で最も印象的なものだろう。

 だが、土星の輪がいつ、どのように形成されたかは分かっておらず、専門家の間でも見解が割れている。

 この疑問に対する新たな仮説がこのほど、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 太陽から6番目の惑星の土星は、45億年前の太陽系初期に形成された。だが、土星の輪の出現はそれよりかなり後で、わずか1億年ほど前だとする説が、過去の研究で提唱されていた。

「しかし、輪が1億年前に形成されたことの説明がつかず、この結論を導いた推論を疑問視する声も一部で上がっていた」と、最新論文の筆頭執筆者で、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のジャック・ウィズダム(Jack Wisdom)教授(惑星科学)は述べる。

 ウィズダム教授と研究チームは今回、複雑な数理モデルを構築し、時系列の正しさを証明するとともに、自転軸の傾きという土星のもう一つの特徴をより詳細に理解する説明を可能にした。

 土星の自転軸は26.7度傾いている。ただ、土星のような巨大ガス惑星の場合、惑星形成に至る物質の集積プロセスにより、傾きが起きることはないと考えられている。

 研究では、米航空宇宙局(NASA)の無人探査機カッシーニ(Cassini)が、土星の深部に突入する前の最終ミッション「グランドフィナーレ」で収集した重力データを用いて惑星内部をモデル化した。

 これに基づき数値シミュレーションを行った結果、過去に消滅した衛星があったと仮定すると説明できることが分かった。

「衛星は崩壊して多数の破片となり、その後、破片はさらに粉々になって徐々に輪を形成した」と研究チームは説明している。

 この失われた衛星は、ウィズダム教授により「クリサリス(Chrysalis、さなぎの意味)」と名付けられた。地球の衛星の月よりやや小さく、土星の別の衛星「イアペトス(Iapetus)」とほぼ同じ大きさだったと、研究チームは考えている。イアペトスは、水の氷を主成分とする衛星だ。

 ウィズダム教授は「土星の輪はほぼ水(氷)で構成されている。過去にクリサリスという衛星が存在し、その衛星を成していた水の氷が、土星の輪を形成するに至ったとする仮説は理にかなっている」と話した。(c)AFP/Lucie AUBOURG