【9月21日 AFP】英国のエリザベス女王(Queen Elizabeth II)の国葬が行われた19日、首都ロンドン南部のパブ「クイーン・エリザベス」の客は、葬儀のテレビ中継にくぎ付けとなっている人と、無関心な人で二分されていた。

 このパブは、イングランドを約500年前に治めたエリザベス1世(Queen Elizabeth I)の名前を冠している。白髪頭の常連トニーさんは、世界の注目を集めた壮大な儀式を見るよりも、目の前のビールにはるかに関心があるようだった。「彼ら(王族)は自分とはまったく違う生活を送っている」

 妻にはまだ仕事中だと思われているため匿名で取材に応じた若い清掃員の男性は、さらにそっけなく、「彼らは俺の請求書のひとつだって払ってくれたことはない」と語った。

 外でたばこを吸うために立ち上がった際、2人はそれぞれテレビの生中継を黙ってちらりと見た。また時折、カミラ王妃(Queen Consort Camilla)や、性的暴行疑惑が浮上したアンドルー王子(Prince Andrew)についての悪態が放たれた。

 ロイ・ウェイアさん(71)は、自身は王室支持者ではないとし、「彼らは私のために何もしていない」と話した。一方、近くの席に座るハッサン・ハリルさん(69)は中継を熱心に見ながら、女王の死は「非常に悲しい」と吐露。「女王はとても好きだ」「世界の母親のような存在だった」と語った。

 一方、バーを挟んだ反対側の別室は、ビールの他にも紅茶やジュースを飲む人々が集まる家庭的な雰囲気で、女王への思いを示す人も多かった。

 ジャスティン・ウェルビー(Justin Welby)カンタベリー大主教が、女王の「愛に満ちた奉仕」をたたえる説教をした際には、ある客はテレビの音量を上げるよう頼んだ。また、騒々しくなったもう一方の部屋をにらみつける客もいた。

 2分間の黙とうがささげられた際には、この部屋の全員が静まり返り、国葬の終わりにはチャールズ国王(King Charles III)の即位に伴って「女王」の部分が「国王」に変更された国歌「神よ国王を守りたまえ(God Save the King)」を立ち上がって斉唱した。(c)AFP/Sylvain PEUCHMAURD