【9月20日 AFP】暗号資産(仮想通貨)市場で先週、ビットコイン(Bitcoin)に次ぐ時価総額2位のイーサリアム(Ethereum)が業界最大のシステム移行「マージ(Merge)」を完了した。狙いは環境負荷の削減にある。

 年間消費電力量がニュージーランドよりも多いと批判にさらされてきたイーサリアムは、数年前からエネルギー効率の高いシステムの開発に取り組んできた。

 イーサリアムの生みの親であるビタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は、「ついに完了!」とツイッター(Twitter)に投稿。「イーサリアムのエコシステムにとって重大な転機」だと述べた。

 同氏が引用した調査結果によると、イーサリアムのマージによって世界の電力消費量が0.2%削減されるという。

 だが、新システムで必要になるエネルギー量はまだ分からないとして、この主張に懐疑的な専門家もいる。

■PoWからPoSへ

 ビットコイン、イーサリアムをはじめとする暗号資産の取引を承認する作業は「マイニング(採掘)」と呼ばれる。倉庫のような巨大なスペースに高性能なコンピューターを大量に用意し、複雑なデータ処理を行う作業だが、その際、大量のエネルギーが消費される。

 イーサリアムがこれまで採用してきた「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」と呼ばれる仕組みでは、マイニングに必要な計算にいち早く成功した人がサイバー通貨で報酬を受け取るが、大量のエネルギー消費を伴う。

 新たに採用された「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」と呼ばれる仕組みでは、こうした競争の要素が取り除かれ、「マイナー(採掘者)」の存在も不要になる。そのため、大量のコンピューターで膨大なエネルギーを消費する必要もない。

 PoSではマイナーに代わって、「バリデーター(承認者)」と呼ばれるノード(端末)が安全性の高い分散型の台帳技術「ブロックチェーン」に記録されるデータの妥当性を検証する。

 バリデーターになるためには、イーサリアムの仮想通貨で32イーサ(約800万円)を投じる必要があり、その後、ランダムなプロセスによって選ばれたバリデーターが検証を行い、報酬を受け取ることができる。(c)AFP/Joseph BOYLE