【9月29日 AFP】男子テニスのロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)は、態度の悪さとポニーテールが特徴のやんちゃな若者から、誰からも尊敬される手本にして現代テニスの象徴として、ほとんど聖人のような地位を手に入れるに至った。

 史上最高の選手とも評される道のりを歩んできたフェデラーは、四大大会(グランドスラム)初優勝を果たした2003年のウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon)から19年以上がたった24日、ついに現役から引退した。欧州チームとワールドチームの対抗戦レーバー・カップ(Laver Cup 2022)に出場し、最後の試合を勝利で飾ることはできなかったが、盟友ラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)とのダブルスでキャリアに幕を下ろした。

 現在41歳。1年半で3回目となる膝の手術から復活を目指していたが、避けがたい時間の流れに屈した。

 グランドスラム勝利数はウィンブルドン8勝を含む20勝で、ツアー優勝は103回、生涯獲得賞金だけでも1億3000万ドル(約188億円)以上に達する。そのすべてをまれに見る優雅さとレーザーのような正確性、代名詞の片手バックハンドで成し遂げた。

 フェデラーの卓越した能力は、「RF」のイニシャルが入った帽子をかぶるファンの大軍団を世界中に生み、唯一無二のオーラを本人にまとわせた。「宗教体験としてのフェデラー」という、フェデラーを激賞した記事を書いた記者もいた。

 2004年の全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament)優勝後に初めて世界ランキング1位に立つと、ランク1位の在位期間は通算310週に達し、2004年2月から2008年8月にかけては237週連続でトップを守った。

 フェデラーブランドは経済的な評価も高く、36歳だった2018年にはカジュアル衣料ブランドのユニクロ(Uniqlo)と10年総額3億ドル(約434億円)で契約。翌年には純資産4億5000万ドル(約651億円)と報じられた。

 絶頂期には対戦相手も途方に暮れるほどの強さを誇った。2004年のウィンブルドン決勝でフェデラーに敗れたアンディ・ロディック(Andy Roddick)は、疲れ果てた様子で「こちらはありとあらゆる手を尽くしたが、彼にはそれ以上の引き出しがあった」とため息をついた。

 コート外では家族思いの父親で、2000年のシドニー五輪で出会った元選手の妻ミルカ(Mirka)さんとの間に2組の双子をもうけた。