【9月17日 AFP】戦争は机上で計画されるが、現場で戦われる。ウクライナ侵攻をめぐるロシア軍の戦略的な誤りは、特に兵卒の統制が不十分であることを示している。

 ロシアが2月24日に侵攻を開始した当初、多くの兵士がその目的を明確に把握しておらず、中には単なる演習のために招集されたと思っていた兵士もいたことが示唆されていた。そして半年が経過した今も、西側諸国の専門家は、ロシア軍が虚偽と腐敗にまみれ、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とその側近が聞きたがっていることを伝えるのに必死だとみている。

 エルサレム安全保障戦略研究所(JISS)のアレクサンダー・グリンバーグ(Alexander Grinberg)氏は、「プーチン氏は非現実的な結果を要求するため、非公開の場であっても同氏には誰も本当のことを伝えない」と指摘する。

 軍事史家で作家のクリス・オーウェン(Chris Owen)氏も、「ロシア軍の将校は部隊の状況について上官によくうそをつく」と説明。ロシア兵が戦闘で成功を収めたという虚偽の報告をする通信をウクライナ側が傍受しており、そうした虚偽情報に基づいて攻撃が行われていると指摘した。

■士官育成の失敗

 ロシア軍の不意を突いたウクライナ軍の最近の反撃をめぐっては、ロシア軍内での脱走、命令拒否、士気の低下など、指揮系統の崩壊を示唆する情報が出ている。さらに専門家は、将官や士官の死や負傷が大打撃となっていると指摘。軍隊の訓練体制が近年悪化し、有能な後任を確保するのが難しくなっているとみている。

 匿名を条件にAFPの取材に応じたフランス軍幹部は、ロシア軍には階級を上って「その分野のエキスパート」となった下士官が十分にいないと指摘。ロシアは年配の兵士を優先して昇進させる傾向があるが、「年長者だけが昇進し、部下との関係が権力によるものだけになると、攻撃を実行するのが難しくなる」と説明した。

■受刑者を傭兵に?

 ウクライナの電撃的な反攻を受け、プーチン氏が総動員令に踏み切る可能性をめぐる議論が再燃している。そうなれば、同氏がこれまで「特別軍事作戦」と呼んでいたものが、紛れもない「戦争」であることが明確になる。

 ロシア政府はその代わりに、ワグネル(Wagner)などの民間軍事会社から傭兵(ようへい)を積極的に雇い入れたり、正規軍の志願兵を増やしたりしようとしているようだ。

 ソーシャルメディア上では、プーチン氏と親しい関係にあり、ワグネルの資金源となっているとみられるオリガルヒ(新興財閥)のエフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏が、ロシアの刑務所の中庭で受刑者たちに契約を持ちかける様子を撮影したとされる動画が拡散。AFPはその信ぴょう性を確認していないが、動画の人物は受刑者に対し「半年間従軍すれば、自由になれる。ウクライナに着いた後、これは自分には合わないと決めた者は、われわれが処刑する」と宣告していた。(c)AFP/Didier LAURAS