【9月15日 AFP】欧州連合(EU)は14日、ロシアのウクライナ侵攻により高騰している天然ガスと電力の価格を抑制するため、エネルギー企業の利益を一部徴収する方針を発表した。

 欧州委員会(European Commission)のウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長は、仏東部ストラスブール(Strasbourg)のEU議会で行った一般教書演説で、電力市場の「大幅で包括的な」改革を表明。価格高騰の恩恵を受けているエネルギー企業の利益に上限を設け、徴収する1400億ユーロ(約20兆円)を一般家庭や他の企業に振り分けることで、消費者への影響を「緩和」すると説明した。

 フォンデアライエン氏は、「この状況下で、戦争の影響を利用して消費者から記録的な利益を得ることは間違っている」と指摘。石油や天然ガス、石炭の大手企業も「危機に貢献する必要がある」と言明した。

 改革案にはこの他、エネルギーの供給制限、一時的な国家支援、天然ガスと電力の価格の切り離しも含まれる。化石燃料に代わるクリーンエネルギー源として、水素事業に最大30億ユーロ(約4300億円)を投資する新銀行の設立も発表。EUは同時に、調達先を米国やノルウェー、アルジェリアなど「信頼できる供給国」に切り替えを進めているとした。

 これとは別に、EU各国も独自の措置を講じている。ロシアがパイプライン「ノルドストリーム(Nord Stream)」を通したドイツへのロシア産天然ガス供給を停止したことを受け、フランスの天然ガス輸送網を運営するGRTガス(GRTgaz)は14日、来月中旬からドイツへの輸出量を増やすと発表。エリザベット・ボルヌ(Elisabeth Borne)仏首相は同日、来年の天然ガス・電力価格の上昇を15%に制限すると発表した。

 デンマーク政府も、エネルギー価格が5倍に上昇したことを受け、家計支援のために450億クローナ(約8600億円)を投じてガス料金と光熱費に上限を設ける方針を発表した。(c)AFP/Marc BURLEIGH