【9月8日 AFP】国連(UN)は7日、完全なジェンダー平等の実現には、現在のペースでは300年近くを要するとする報告書を公表した。現在起きているさまざまな危機によって、ジェンダー格差が悪化しているという。

 UNウィメン(UN Women)と国連経済社会局(DESA)がまとめた報告書は「現在の進歩のペースでは、法的保護での格差を解消し、差別的な法律を廃止するのに最長で286年、職場で管理・幹部職に就く男女が同数となるには140年、各国議会で男女の議員数が同数となるには40年以上かかる」との見通しを示した。

 この見通しは、2030年までのジェンダー平等達成を掲げる国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」から大きくかけ離れている。

 報告書は「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)とその余波、激しい紛争、気候変動、女性の性と生殖に関する健康と権利に対する反発などの世界的な課題が、ジェンダー格差をさらに悪化させている」と指摘した。

 報告書によると、国際貧困ラインの1日1.90ドル(約270円)未満で暮らす極度の貧困層は2022年までに、女性が3億8300万人、男性が3億6800人になる見通し。また、2021年には過去最多となる4400万人の女性が家を追われ、出産可能な年齢の女性12億人以上が人工妊娠中絶へのアクセスが制限された国で暮らしている。

 UNウィメンのシマ・バホウス(Sima Bahous)事務局長は「今こそ女性と少女に投資し、進歩を取り戻して加速させるために力を合わせることが重要だ」「収入や安全、教育、健康など、世界的な危機によって女性と少女の生活が悪化していることを示す明白なデータがある。この流れを反転させるのに時間がかかるほど、人類全体の負担が大きくなる」と述べた。(c)AFP