【9月10日 AFP】中東で初の、そしておそらく唯一の女性ビール醸造家だと自負するマディース・クーリー(Madees Khoury)氏は、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)にある小さなキリスト教の村タイベ(Taybeh)を世界的に有名にしたビールブランドを率いている。

 タイベ醸造所は1994年に父親と叔父が立ち上げた。クーリー氏は当時9歳。そこから大きなビアだるに囲まれての生活が始まった。

 2007年に米マサチューセッツ州ボストン(Boston)の大学を卒業した後は、タイベに戻って家業を学んだ。今では醸造所の責任者となり、この村で2005年から続いているビールの祭典「オクトーバーフェスト(Oktoberfest)」の顔となっている。

 2日間にわたって開催されるタイベのオクトーバーフェストは、民族舞踊「ダブケ」なども披露され、パレスチナ人のアイデンティティーを表現する場でもある。

 ヨルダン川西岸でのビール造りは、並大抵のことではない。「(イスラエルの)占領下にあり移動や輸送は非常に困難。水も足りません」とクーリー氏。

 その上、ビール業界は全般的に「女性というだけでとても大変」だが、「男性優位の土地でアラブの土地、しかも占領下なので、他の国より4倍も5倍も大変なのです」とAFPに自身の苦労を語った。

 ヨルダン川西岸には飲酒が許されているキリスト教の町や村が九つしかないため、タイベ醸造所は常に外国への輸出に活路を見いだしてきた。今では年間約180万本を生産。日本から米国まで世界各地で販売されている。

 タイベビールは静かなこの村が地図に載るきっかけとなった。村民の一人は「このビールのおかげで、私たちの村は世界中に知られるようになりました」と語った。(c)AFP/Gareth BROWNE