【10月2日 AFP】私が日本のヒップホップクイーンになる──そう表明する沖縄出身のヒップホップシンガー、Awich(エイウィッチ、35)。反抗的だった10代でラップと出会い、米国で結婚し、その夫が銃で撃たれて死亡するなど、波乱万丈の人生を送ってきた。

 ファンに伝えたいのは「自分自身のストーリーを受け入れる」こと。「そうやって私自身も世の中と向き合う強さを身に付けたから」だと言う。

 ステージネームのAwichは、本名「亜希子」の漢字の意味を英語で並べた「Asian wish child」の略だ。10代の頃からラップを始め、沖縄のアンダーグラウンドのクラブで活動を開始した。

 今年、アルバム「Queendom」でメジャーデビュー。ファッション誌ヴォーグ(Vogue)日本版で取り上げられ、東京・日本武道館で初の単独ライブを行うなど飛躍の一年を迎えている。

 しかし過去には、活動を続けるのは難しいのではないかと思ったこともあるとAFPに語る。「自分が(ヒップホップ)クイーンだなんて、ずっと言えなかった」

「今チャンスに恵まれて、私の音楽、私の歌、私の言葉にこんなに共感してもらえて…すごいことだと思う」

 メジャーアルバムのタイトルソングになっている「Queendom」では、19歳で米ジョージア州アトランタ(Atlanta)に移り住んだこと、そこで夫となる人と出会い、その人の死を経験したこと、日本で娘を育てるようになったことなどを歌っている。「私の人生を数分に凝縮したような曲」と言う。「だから歌うたびに、まるでジェットコースターみたいに感情の起伏がある」

 ステージ上のAwichは、束ねた長い黒髪を大きく揺らし、あふれんばかりの自信をみなぎらせる。これまでの日本の音楽シーンとは「異質のエネルギー」でオーディエンスを挑発する。

 自分にとって大切だと思うテーマについて発言することに躊躇(ちゅうちょ)はしない。反人種差別を唱える「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動に参加し、また日本の女性は「かわいい」存在であるべきだという考えに自身の楽曲で異議を唱えてきた。