【9月7日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は6日、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope)が撮影した星形成領域「かじき座30(30 Doradus)」、別名「タランチュラ星雲(Tarantula nebula)」の鮮明な画像を公開した。これまで観測できなかった詳細が明らかになり、科学的理解が深まるとしている。

 地球から約16万1000光年の距離にあるタランチュラ星雲は、毛むくじゃらのクモの脚のように見える塵(ちり、固体微粒子)のフィラメント構造が特徴的だ。

 ウェッブ望遠鏡の主要撮像装置である近赤外線カメラ「NIRCam」は、若い大質量星の集団から発せられる恒星風で運ばれる放射物によって、星雲の中央に空洞が形成されたことを明らかにした。画像ではこの若い星団は、薄青色の点の集まりとして見えている。

 また、光のパターンを分析して天体の組成を探る観測機器である近赤外線分光器「NIRSpec」により、まだ塵の雲に包まれた状態の誕生間もない恒星が周囲の雲を飛散させている様子も捉えられた。

 さらに、中赤外線機器「MIRI」を用いた撮影も行われた。より長波長帯の赤外線を用いるMIRIは、短波長帯の赤外線を吸収・散乱する塵の微粒子を透過できる。

 このため高温星の光が弱まり、より低温の領域が明確になったことで、これまで観測されたことのない点光源が星形成領域内に存在することが明らかになった。この点光源は、まだ質量を増加させている段階にある原始星を示している。

 タランチュラ星雲は、宇宙が誕生したビッグバン(Big Bang)から数十億年後に星形成がピークを迎えた「宇宙の最盛期」と物質構成が似ていることから研究対象として注目される。(c)AFP