【9月3日 AFP】ロシア軍との戦闘の前線に近いウクライナ南部ミコライウ(Mykolaiv)。人口24人の集落ポクロウシク(Pokrovske)に住むアントニーナ・シドレンコさん(9)は学校が再開する日、大好きな服を着て、一番きれいなリボンを髪に結んだ。教わった詩も暗唱できるようになったが、自宅での授業は、普通の新学年初日とは違う。

 部屋の真ん中に置かれた机の前に座り、「トニア」とあだ名で呼んでくれる先生やクラスメートの顔を携帯電話の画面で見つめる。ロシアによる2月の侵攻開始以来、みんなとは直接会ったことがない。

 アントニーナさんは「学校に戻れてうれしいけれど、戦争がなければもっとうれしいのに。先生や友達に会いたい」とAFPに語り、親友はポーランドに逃げてしまったと言った。

 ウクライナでは1日、侵攻開始後初となる新学年の授業が再開されたが、戦闘の激しい南部一帯の授業はリモートだ。

 背後では何分かおきにウクライナ軍の砲撃とロシア軍が応戦する音が聞こえる。数日前には砲弾の破片で、アントニーナさんの自宅台所の窓ガラスが割れた。

「最初の頃は、家の近くに爆弾が落ちると、床に寝て隠れていました。でも今は、遠くだと慣れてしまって、怖くなくなりました」

 アントニーナさん一家は砲撃が激しくなるたびに車で逃げ、静かになるのを待って戻ってくる。

 母親のナタリヤさん(33)は子どもたちに言い聞かせる。「兵隊さんみたいにしなくちゃ。みんな一緒に、離れないように。油断しないで。お父さんとお母さんの言うことをよく聞いて、バッグに荷物を入れたら急いで、迷わず、逃げること」

 担任の教師がズーム(Zoom)の設定に手間取っている隙に、アントニーナさんは親友のイーホル君とおしゃべりしている。

 アントニーナさんは習った詩を暗記したと自慢している。「ウクライナに平和がやって来るでしょう。良い人たちは平和を望んでいます。大人も子どもも、地球の平和を願っています」 (c)AFP/Thibault MARCHAND