【9月1日 AFP】国連人権高等弁務官事務所(OHCHR、スイス・ジュネーブ)は8月31日、中国の新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)での深刻な人権侵害を指摘する報告書を発表した。拷問が行われているのは明らかであり、「人道に反する罪に相当する可能性がある」としている。

 報告書は、人権高等弁務官を務めていたミチェル・バチェレ(Michelle Bachelet)氏の4年の任期が満了する9月1日午前0時の13分前に公表された。

 報告書は約1年かけて作成された。中国政府から公表しないよう強い圧力を受けていたバチェレ氏は、AFPに対して電子メールで「任期終了までに公表すると明言していた。その通りにしたまでだ」と説明。「(ウイグル自治区の)人権問題は深刻だ。中国政府と地方当局に問題を提起した」と述べた。

 49ページから成る報告書は「中国政府がテロや『過激派』への対策を実施する中、新疆ウイグル自治区では深刻な人権侵害が行われている」と糾弾した。

 さらに「医療行為の強制や劣悪な環境での収容のほか、拷問や虐待の疑惑については信ぴょう性が高い。性的暴力やジェンダーに基づく暴力についても同様だ」と指摘。「ウイグル人などイスラム教徒が多くを占める少数民族に対する恣意(しい)的で差別的な身体拘束は、個人や集団が享受している基本的権利が制限・剥奪されているという観点から、国際犯罪、特に人道に反する罪に相当する可能性がある」としている。

 その上で、中国政府と国連(UN)、国際社会に対し、ウイグル自治区の人権状況に早急に対応するよう呼び掛けている。

 欧米諸国が相次いで認定したウイグル人への「ジェノサイド(集団殺害)」には言及していない。(c)AFP/Robin Millard and Nina Larson