【9月1日 AFP】8月30日に91歳で死去したソビエト連邦最後の指導者ミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)氏について、ロシア国民の中には、より良い国への道を切り開いたと評価する人もいる一方で、経済難と苦しみをもたらしたと批判する人もいる。だがAFPが31日に取材したロシア人の多くが一致したのが、ゴルバチョフ氏が同国の歴史に重要な役割を果たしたという点だった。

 ゴルバチョフ氏は1985~91年にソ連の政権を担った。ソ連の崩壊に伴い、後任としてボリス・エリツィン(Boris Yeltsin)氏がロシアの初代大統領に就任。エリツィン氏が進めた市場経済への移行により、90年代のロシアは急激なインフレと食料不足に見舞われ、多くの国民にとって苦難の時代となった。

 ロシア人の中には、ソビエト時代の終わりを嘆き、ゴルバチョフ氏にその責任を問う人もいる。首都モスクワ中心部でAFPの取材に応じたウラジーミル・ザブコフさん(70)は、同氏を「裏切り者」と呼んだ。「これほど偉大な国を崩壊させたゴルバチョフ氏は、私にとってある意味、無知な政治家だ。たとえ彼が何か有益なことをしたとしても、それですべてが帳消しになった」

 同じくモスクワ在住の30代のウェブデザイナー、ナジェジダ・アレクシナさんは、同氏を厳しく批判することはなかったが、「物議をかもす」人物だったことは認めた。「ロシアにとって、ゴルバチョフ氏はとても重要な人物だった。ロシアが誕生したのは彼のおかげだ。だから多くの人にとって(同氏の死は)大きな損失だと思う」

 タチアナ・シラエワさん(67)はソビエト時代の暮らしについて、「私たちは裕福ではなかったかもしれないが、それでも仕事は保障されていた」と回想する。「ゴルバチョフ氏は米国にとって良い行いをして、国を崩壊させた。私たちにとって、彼は完全な裏切り者になった」

 一方、ソ連崩壊後のロシアを代表する人権活動家スベトラーナ・ガンヌシキナ(Svetlana Gannushkina)氏(80)は、ゴルバチョフ氏が始めた改革を過小評価してはいけないと断言。「きょう敵意を示している人たちは、ソビエト体制への回帰を望む人々だ。奴隷だった人々であり、その状態を維持したいのだ。自由を与えてくれた人に感謝しようとはしない。ゴルバチョフ氏は私たちに自由をもたらした」とAFPに語った。(c)AFP