【8月31日 AFP】イラクの首都バグダッドで起きたイスラム教シーア派(Shiite)諸派と治安当局との衝突で、シーア派有力指導者ムクタダ・サドル(Moqtada Sadr)師の支持者は30日、同師による戦闘終結の要請を受け、市中心部のグリーンゾーン(Green Zone)から撤退を始めた。

 29日に発生した騒乱では、サドル師支持者が親イランのシーア派勢力や治安部隊とバリケード越しの銃撃戦を展開。これまでに30人が死亡し、負傷者は数百人に上っている。国連(UN)は、戦争で荒廃したイラクがさらに混乱に陥る危険性があると警告した。

 サドル師は30日にテレビ演説し、支持者に対し1時間以内に撤退するよう命じ、居残った人々については「関知しない」と警告した。この後、支持者はグリーンゾーンから撤退を開始。軍は全国に出していた夜間外出禁止令を解除した。

 イラクは現在、内閣や首相、大統領が数か月にわたり不在となる政治危機に陥っており、緊張が高まっている。

 今回の騒乱では、サドル師の政界引退表明を受け、支持者がグリーンゾーン内にある政府庁舎の共和国宮殿(Republican Palace)に突入。夜間にはグリーンゾーンに対する砲撃もあった。グリーンゾーンは政府庁舎や外国大使館が集まる地域で、厳重な警備が敷かれている。

 サドル師は、2003年に米軍などがサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権を打倒した後、武装勢力を率いて米軍やイラク政府軍に対抗。現在も熱狂的な支持者を多く有している。(c)AFP/Guillaume Decamme