■「時限爆弾」

 キャンプでは計100万人近いロヒンギャ難民が暮らしており、約半数は18歳未満だ。

 バングラデシュ軍の元将軍マフズル・ラフマン(Mahfuzur Rahman)氏は、同国政府が長期的な計画の必要性に「気付いた」のは、教育を受けていない若者がキャンプにいるリスクに着目したためだと指摘する。

 キャンプの中では薬物を密売するギャングがうろつき、治安はすでに深刻な問題になっている。この5年間に起きた殺人事件は100件以上。武装勢力や犯罪集団は、キャンプ生活にうんざりしている若者の勧誘にも力を入れている。

 ラフマン氏は、すべての子どもが「時限爆弾になりかねない」とAFPに語る。「教育も受けられず、夢も希望もないキャンプで育つと、どんな怪物になってしまうのか見当もつかない」

■ミャンマーにとどまったロヒンギャの苦難

 一方、5年前にバングラデシュに逃れる道を選ばなかった人もいる。母親からミャンマーにとどまるよう懇願されたマウンソウナインさん(仮名)もその一人だ。

 故郷と呼ぶ場所に今も住んでいるが、将来の計画を立てることはすっかり諦めたと話す。また弾圧で破壊されるかもしれないからと、雨期ごとの家の修理はやめてしまったため、自宅は荒れるがままになっている。

 ミャンマーに残る約60万人のロヒンギャは、キャンプに収容されているか、あるいは村にとどまっている場合もミャンマー軍や国境警備隊に翻弄(ほんろう)され、いつまた生活が一変するか分からない。

 大半は市民権を与えられず、移動や医療、教育に関して制限を受けている。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)はロヒンギャに対するこうした処遇を、かつての南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)になぞらえて非難している。

 ロヒンギャの人々は「常にこの国から出ていくことを考えています」とマウンソウナインさん。「でも、出ていくことも許されません。拘束され、移動も止められてしまうからです」