【9月5日 AFP】カナダ北部ハドソン湾(Hudson Bay)で、数頭のシロイルカ(ベルーガ)が水面から頭を出したり潜ったりしている。

 ハドソン湾は毎年11月から翌6月まで7か月以上にわたって凍結するが、夏になって氷が解けると、北極圏からシロイルカが南下してくる。その数は約5万5000頭に上る。

 ハドソン湾に流れ込むチャーチル(Churchill)川の河口付近は、シロイルカにとって温かく安全な出産場所となっている。シャチから身を守ることができ、餌も豊富だ。

 シロイルカは50種類ほどの鳴き声を出すために、「海のカナリア」とも呼ばれている。

 環境保護団体「レインコースト・コンサベーション・ファウンデーション(Raincoast Conservation Foundation)」の研究者でシロイルカ専門家のバレリア・ベルガラ(Valeria Vergara)氏は「シロイルカは音を頼りに暮らしている種で、人間にとっての視覚と同じくらい音が重要です」と説明する。

「コミュニケーションもエコーロケーション(反響定位。音の反響で周囲の状況を知ること)も、音を頼りに行い、餌を探すのです」

 同氏の研究によると、群れの仲間同士は意思伝達のためにさまざまな「コンタクトコール」を使い分けている。

 生まれたばかりのシロイルカは体長約1.8メートル、体重80キロ前後で、授乳期間は2年ほど。成獣は体長6メートルほどまでになり、寿命は40~60年に及ぶ。

 ハドソン湾に移動して来るシロイルカの個体数は世界最多だ。

 だが研究者らは、北極圏では温暖化が他の地域の3~4倍の速さで進行し、海氷が減少している状況に懸念を抱いている。

 映像は8月7、8日撮影。(c)AFP/Marion THIBAUT