【8月26日 AFP】世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は25日、故郷のエチオピア北部ティグレ(Tigray)州の状況をめぐる個人的な苦悩を吐露し、親族が苦しみ飢えているにもかかわらず、連絡も支援もできないことを嘆いた。

 スイス・ジュネーブのWHO本部で記者会見したテドロス氏は、ティグレ州には多くの親族が住んでいると説明。「お金を送りたいが、送れない。飢えていることを知っているが、助けることができない」と語った。同州は完全に封鎖された状態で、「誰が死んだのか、誰が生きているのかさえ分からない」という。

 内戦が続くエチオピアでは、ティグレ州の住民600万人が2年近くにわたり基本的なサービスから事実上切り離されている。テドロス氏は、封鎖が「銃弾や爆弾だけでなく、銀行や燃料、食料、電気、医療を武器にして人々を殺してきた」と非難した。

 前日には政府軍と反政府勢力「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」の間で戦闘が発生し、5か月にわたり続いていた休戦が破綻。和平への期待に影を落としている。

 テドロス氏は、戦闘再開は悲劇だとしつつも、「現実には、戦争は決して止まっていなかった」と指摘。休戦中もティグレ州は封鎖されたままで、食料や医薬品はほとんど入手不可能だったと説明し、「必要不可欠なサービスの再開と封鎖の中止」を改めて訴えた。

 また、自身がWHO事務局長の立場を乱用し、出身地への人道支援を繰り返し訴えたとの批判に反論。人々の健康が懸念される国について取り上げることが自身の職務であり、「私はイエメンのためにも同じことをし、現地を訪問した。シリアのためにもしたし、ウクライナのためにもしている」と主張した。(c)AFP