■修復されたイメージ

 ダイアナ元妃の死の直後、前年に元妃との離婚が成立していたチャールズ皇太子とエリザベス女王はスコットランドのバルモラル城(Balmoral Castle)に数日間留まり、公式声明を一切出さなかった。これ以外にも不手際が重なり、英国を揺るがす事態に王室は無関心だったというメディア報道の解釈が定着した。

 王室評論家の間では、この批判の妥当性について見解が分かれている。王室は母親を突然失ったウィリアム王子(Prince William)とヘンリー王子を支え、葬儀の準備を入念に行うことを優先したと指摘する声もある。

 バッキンガム宮殿(Buckingham Palace)のメディア対応は徐々に見直され、広報に精通した人材が投入されるようになった。

 エリザベス女王の伝記「Queen of Our Times: The Life of Elizabeth II(現代の女王:エリザベス2世の生涯)」を今年出版した作家ロバート・ハードマン(Robert Hardman)氏は、ニュースのサイクルが24時間止まることなく加速し、さらにソーシャルメディアが登場する中で、王室は慎重に「進化」したと説明する。

「王室はシリアルのブランドではない。リニューアルはしない」「ゆっくりと、気づかないうちに、だがしっかりした理由があって変化していくものだ。当時、変わらなければならないという意識は確かにあった。とはいえ、いきなり全てを壊してしまってはいけない」

 こうして、臣民よりも犬や馬を気に掛けていると報じられてきた女王について、より「人間的」なイメージが提供されるようになった。

 王室関係者によると、高慢で堅物だとやゆされていたチャールズ皇太子のイメージチェンジは高くついた。カギを握ったのは、ウィリアム王子とヘンリー王子だ。2人は母親譲りの「思いやりある王子」として描かれ、皇太子のイメージは「母の死という悲劇にショックを受けた息子たちを支える愛情深い父親の姿を軸に、非常に慎重に修復された」とオーウェンズ氏は述べた。