【8月24日 東方新報】中国・四川省(Sichuan)の川で鉄砲水を受けた観光客ら7人が死亡した事故を巡り、インターネット上で議論が起きている。この場所は立ち入り禁止区域なのにインターネットのインフルエンサーらが「観光スポット」として宣伝しており、「インフルエンサーたちに責任はないのか」という声が起きている。

 事故が起きたのは、四川省彭州市(Pengzhou)の竜漕溝(Longcaogou)。中国語で「溝」は川筋、谷間を意味する。8月13日午後3時半ごろに鉄砲水が発生し、川辺で水遊びやキャンプをしていた観光客らが巻き込まれ7人が死亡、8人が軽傷を負った。

 中国で風光明媚(めいび)な地域は通常、行政が通路や休憩所などを整備して「景区(名勝地)」に指定し、入場料を取る形が多い。自然の渓谷が残る竜漕溝はそうした開発はされておらず、各地を旅するタイプの網紅(インフルエンサー)たちが「野生景区」として紹介していた。こうした場所は「網紅打卡地」と呼ばれる。「打卡(Daka)」とは本来、勤務先でタイムカードを打つことを指したが、最近は「『映える』スポットに来て、SNSで発信する」ことを意味するようになった。

 こうして竜漕溝は人気観光スポットとなったが、もともと土石流や鉄砲水が発生しやすいため、地元の人びとはほとんど遊びに訪れることがない場所。彭州市は川への立ち入りを禁止し、水遊びやキャンプをしないよう繰り返し呼びかけていた。現地には「入水禁止」の看板もあったが、事故当日は1000人ぐらい訪れていたという証言もある。鉄砲水が流れてくる直前に撮影された動画では、地元関係者が「頼むから早く逃げて!」と何度叫んでも観光客が川辺で遊び続けており、危機意識のなかった様子が伝わってくる。

 水難事故の後、SNSで竜漕溝を紹介していた網紅たちは次々と投稿動画を削除。これに対しネット上で「危険な地域を観光スポットとして紹介した責任はないのか」「動画投稿を野放しにしたプラットフォームも管理責任があるはず」という指摘が相次いでいる。

 上海市の張耀(Zhang Yao)弁護士は「インフルエンサーがやみくもにアクセス数を稼ぐため、故意に誤った宣伝をするか悪意をもって誘導する動画を投稿した場合、刑事罰の対象になり得る。プラットフォームも明らかに問題のある投稿動画の監督義務を怠ったとすれば、民法上の不法行為に問われる可能性がある」と指摘。今回の事故で実際にインフルエンサーやプラットフォームの法的責任を問うのはハードルが高いとみられるが、動画投稿者の道義的責任やプラットフォームの管理体制のあり方といったSNSの問題点を象徴した騒動となっている。(c)東方新報/AFPBB News