【9月18日 AFP】近年、さまざまなスポーツ大会の主催や、試合開催が増えているサウジアラビア。同国のスポーツ相はAFPに対して、五輪を主催することが「最終目標」と話し、批判の的になっている人権問題があることは否定した。

 国の事実上の指導者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)の下、6年前に多角的な戦略を承認したサウジアラビアは、石油に依存した経済から脱却する策の一環として、スポーツへの投資を行っている。

 8月20日には、紅海沿いの都市ジッダ(Jeddah)でボクシング、WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級タイトルマッチのオレクサンドル・ウシク(Oleksandr Usyk、ウクライナ)対アンソニー・ジョシュア(Anthony Joshua、英国)戦を行った。

 2034年には、首都リヤドでアジア競技大会(Asian GamesAsiad)を主催する。ウシク対ジョシュア戦を前に、AFPの取材に応じたスポーツ相のアブドルアジズ・ビン・トルキ・ビン・ファイサル(Abdulaziz bin Turki bin Faisal)王子は、複数スポーツから成る大型イベントの開催は、五輪招致への試金石になり得ると話している。

 オーストラリア・ブリスベン(Brisbane)での夏季五輪の2年後に行われるリヤドでのアジア大会についてファイサル王子は、「現在のわれわれの第一目標は、2034年(のアジア大会)だ」と発言。「この件(五輪)については、国際オリンピック委員会(IOC)と今後話し合う用意がある。私としては、サウジアラビアはそうした大会を主催する能力があることを示していると思う」とし、「もちろん、五輪はわれわれの最終目標だ。受け入れる用意はあるし、やれると思っている」と続けた。

 その一方でウシク対ジョシュア戦の直前には、英国で大学院の博士課程に通っていたサウジ女性サルマ・シェハブ(Salma al-Shehab)さんが、ツイッター(Twitter)で人権について発信したことで、「公序を乱す」目的の反体制派を支援したとして裁判所から禁錮34年の有罪判決を受けた。国連(UN)の人権高等弁務官事務所は「がくぜんとする」判決だと反応している。

 サウジアラビアは、2018年にサウジの反体制派ジャーナリスト、ジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏が殺害された事件でも、多くの人権活動家が収監や渡航禁止といった弾圧を受けている問題でも、大きな批判を浴びている。

 同国のスポーツも、人権侵害から目をそらす「スポーツウオッシング」の手段だと繰り返し非難されている。しかしファイサル王子は、そうした批判は的外れだと反論し、スポーツ大会の実施は国が変わり始めているしるしだと指摘する。

「われわれは前進しているし、今後のより良い社会と、生活の質の改善、今よりも優れた国に向かって進んでいる。また事実として、こうした大会を主催するのは、われわれの国民の利益になっているし、サウジ国内で起こっている変化や人々の暮らしに貢献している」

 ボクシングでは、2019年にサウジアラビア初の世界ヘビー級タイトルマッチとして、ジョシュア対アンディ・ルイス・ジュニア(Andy Ruiz Jr、米国)の第2戦が行われ、昨年にはフォーミュラワン(F1、F1世界選手権)の開催地に加わった。

 ゴルフでは、政府系ファンド「公的投資基金(Public Investment Fund)」が資金を援助するリブゴルフ・シリーズが、巨額の契約料や賞金を使って多くのトップ選手を引き抜き、ゴルフ界に分断を生み出している。対抗措置として、米ツアー(PGA Tour)は移籍した選手の資格を無期限で停止し、いくつかの大会で賞金を引き上げた。米ツアーに残った選手も、タイガー・ウッズ(Tiger Woods、米国)やロリー・マキロイ(Rory McIlroy、北アイルランド)を中心に新大会への対策を話し合った。

 ファイサル王子は、ここまでの騒動は予想していなかったと明かし、「正直に言って、あまり考えていなかった」と話しつつ、「このスポーツにとって利益があることなら、やらない理由がないし、誰かがやっただろう」と主張した。

「選手やスポーツに利益があり、ゴルフの注目度が高まって、このスポーツに参加したい人が増えるなら、それは万人のためのゴルフを成長させることになるはずだ」

 サウジアラビアは、2027年に予定されているサッカーの男子アジアカップ(AFC Asian Cup)、2026年の女子アジアカップ(AFC Women's Asian Cup)の開催地にも立候補している。2029年には、ネオム(NEOM)にアジア冬季競技大会(Asian Winter Games)を招致することも目指している。(c)AFP/Talek HARRIS