【8月23日 AFP】ブラジルのポルトガルからの独立を宣言した初代皇帝ペドロ1世(Pedro I)の心臓が22日、独立200年に合わせ一時帰還した。

 ペドロ1世の心臓は死後に体から取り出され、ポルトガル・ポルト(Porto)の教会に安置された。心臓以外の遺体はブラジル・サンパウロ(Sao Paulo)の独立記念碑内部に埋葬されている。

 ポルト市はこのほど、9月7日のブラジル独立200年記念行事のため、ペドロ1世の心臓をブラジルに貸し出すことに合意した。

 ガラス瓶に入った心臓は重量9キロの金色のつぼに納められており、通常は5重の鍵で守られている。ブラジルに貸し出される間、ポルト市の警察官が警護に当たる。

 ブラジルに到着した心臓は、国賓のような歓迎を受けた。

 外務省の儀典部門の責任者は、心臓は「ペドロ1世が生きているかのように、訪問中の外国首脳のように」扱われると話した。

 ペドロ1世はポルトガル王室の皇太子で、ナポレオン(Napoleon)率いるフランス軍の侵攻から逃れ、9歳の時にブラジルに渡った。ポルトガルではペドロ4世(Pedro IV)とも呼ばれる。1822年9月7日にブラジルの独立を宣言し、初代皇帝となった。

 1831年に生前退位し、ポルトガルに帰国。1834年に結核で亡くなると、生前の希望通り心臓が取り出されポルトに安置された。

 ペドロ1世の心臓のブラジル「訪問」中のスケジュールは詰まっている。

 ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領は23日、心臓のために軍による式典を執り行う。

 その後、心臓は外務省庁舎で17日間にわたり一般公開される。

 10月の大統領選で再選を目指すボルソナロ大統領は、心臓を利用してナショナリズムをあおっていると非難されている。

 ボルソナロ氏は、独立記念日に自身の支持者らによるデモ行進と軍事パレードも計画している。

 心臓のパレードは、軍事独裁政権(1964~85年)が1972年にペドロ1世の心臓以外の遺体を、ポルトガルからブラジルに再埋葬した当時を思い起こさせるという声も上がっている。ボルソナロ氏は、軍事独裁政権を尊敬していることを公言している。

 ペドロ1世やブラジル独立に関する著書がある歴史家のリリア・シュワルツ(Lilia Schwarcz)氏は「心臓を国賓のように歓迎するなどボルソナロの茶番だ」と述べた。(c)AFP/Ramon SAHMKOW