【8月24日 東方新報】9月入学制の中国では、夏休みは「若者の整形手術シーズン」。高校・大学の卒業生が人生の次のステージに向かう節目に、外見を変えようとする。大がかりな整形手術をして回復までに数週間を要する場合もあるため、長期休暇の夏休みはうってつけとなる。

 国際美容外科学会(ISAPS)によると、中国は米国、ブラジルに次いで美容外科手術・処置数が多い「整形大国」だ。近年は「顔値(顔面偏差値)」という言葉も定着。外見が良い人は、恋愛や就職、起業など社会的に成功しやすいといわれている。

 ただ、最近は、そうした動機より「美しくなりたい」という単純な欲求から整形手術を選ぶ若者が増えているという。美容整形医療プラットフォーム「更美(Gengmei)」のリポートでは、美容整形をする年齢層は「95後(1990年代後半生まれ)」が36%、「00後(2000年代生まれ)」が19%を占めている。

「二重まぶたにして、鼻を高くしたい。できれば小顔にも」。北京市の中国医学科学院整形外科病院では、高校を卒業したばかりの18歳の女性が連日のように訪れている。手術には親の同意が必要なため、母親同伴が多い。以前なら整形に反対する親が大半だったが、最近は「子どもの望みをかなえてあげたい」と賛同する親が増えてきているという。

 同病院の王永前(Wang Yongqian)医師は「当病院では顔に先天性の奇形がある人の整形手術がメインですが、7~8年前から『きれいになりたい』という若者が増えてきました。美の基準はさまざまなので、未成年者には基本的に整形を勧めません」と説明する。

「他の機関で整形手術に失敗した」と顔の回復手術を求める若者も少なくない。王医師は「例えば、肌のたるみ改善や鼻や唇の形成に使われるヒアルロン酸注入は技術的要求が高い。顔面は血管や神経が密集している。誤ってヒアルロン酸を血管に注入すると血管閉塞(へいそく)が起き、顔の部分の壊死(えし)や失明につながる」と指摘。「プチ整形」といっても「プチリスク」ではないと警鐘を鳴らす。

「早期整形、早期利益」「最新の技術で、ほとんど体を傷つけない」「あなたの決断が人生を変える」。インターネットでは整形手術を勧める宣伝が多い。ある整形外科医は「栄養が行き届いている最近の若者は、体の発達は早いが、心の発達が追いついていない。外見の不安をあおられ、熟慮せず整形を決断する若者も多い」と語る。

 専門病院は費用が高かったり美容目的では手術を断られたりするため、街角の美容クリニックで整形手術を受ける若者は多い。ただ、こうしたクリニックの中には、1週間ほどの医療美容研修を受けただけの「にわか経営者」もいて、医療資格のないスタッフが手術を施すこともあるという。

 専門家は「業界健全化のため不正行為の摘発を強化する必要がある。若者も安易な整形はやめるべきだ」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News