【8月23日 AFP】犬の飼い主にとって、長時間の外出から帰宅した時に愛犬がしっぽを振って勢いよく飛びついたり、顔をなめたりして出迎えてくれることは純粋にうれしいものだ。しかし、犬はじゃれついてくるだけでなく、涙まで浮かべる可能性があるとの説を、日本の研究チームが発表した。

 研究チームの論文は22日発行の米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された。執筆者の一人、菊水健史(Takefumi Kikusui)教授は、飼い主との再会といったうれしい場面では動物も涙を流すという説はこれまで聞いたことがなく、「世界初」の発見かもしれないと語った。

 研究チームは犬の目の縁に特殊な装置を付けて涙の量を測定。飼い主と5~7時間離れ離れになった後で再会すると、5分以内に涙の量が「著しく」増加することが分かった。飼い主と再会した時の涙の量は、それ以外の顔なじみの人と会った時よりも多かった。

 研究チームによると、涙の量が増えるのは「愛情ホルモン」とも呼ばれる、絆を強める働きを持つオキシトシンの分泌が関係している可能性がある。

 また研究では、犬の涙が飼い主の感情に及ぼす影響についても調べた。

 人工涙液を点眼した前後の飼い犬の写真を飼い主に見せ、どの写真に最もいとおしさを感じるか尋ねたところ、涙を浮かべている写真の方が、通常の写真よりもはるかにいとおしく感じるとの回答が得られた。

 菊水教授は、犬にしてみれば飼い主に涙目を見せることでより大切にされる可能性が出てくると推論。研究チームは、人間でも幼児は泣くことでネガティブな感情を伝え、親の世話を促していると指摘する。

 他の動物と違って家畜化された犬は、時間をかけて人間との特殊なコミュニケーション能力を発達させてきた。アイコンタクトは、飼い主との絆を深める役割を果たしているようだ。(c)AFP