【8月19日 People’s Daily】黄河河口の湿地の生態系と希少種と絶滅危惧種の鳥類を保護するため、1992年に、黄河デルタ国家級自然保護区が設立された。総面積は1530平方キロメートルで、暖温帯の湿地生態系として、世界で最も完全かつ最も若い状態で保存されている地域だ。

 近年、保護区は生態補水を強化し続け、黄河の調水(水の量を調節)を実施し、生態補水量は過去3年間で3億6000万立方メートルに達し、海水侵入による湿地の生態系への被害を効果的に抑制し、土壌のアルカリ化を緩和した。

「スパルティナ・アルテルニフロラは湿地の生態学的安定性の『破壊者』だ」。山東省(Shandong)東営市(Dongying)海洋経済発展研究院の王金河(Wang Jinhe)院長は、「その強い繁殖力と密集した根系は、地元のシチメンソウ(七面草)、ギョリュウなどの植生の生存圏を侵食し、干潟(ひがた)底生生物の密度を著しく低下させ、鳥類の餌探し・生息空間を大幅に縮小させ、保護区の生物多様性を脅かしている」と述べた。

 2016年以来、東営市は中国科学院(CAS)煙台海岸帯研究所などの科学研究機構と共同で、地理情報システム、リモートセンシング技術を用い、野外現地調査と合わせ、黄河デルタにおけるスパルティナ・アルテルニフロラの分布パターンと侵入メカニズムを把握し、さまざまな管理技術を模索し、管理プロジェクトを次々と実施し、スパルティナ・アルテルニフロラの繁茂を効果的に抑え、潮間帯(ちょうかんたい)の生物種を効果的に回復した。

 また、保護区は計10億7600万元(約215億円)を投資し、16の湿地復元プロジェクトを次々と実施し、7万2500ムー(約48平方キロメートル)の退耕還湿(耕地を湿地に戻す)、退養還灘(養殖地を浜に戻す)を完了し、241キロメートルの水系をつなぎ、シチメンソウと海草藻場(もば)4万7000ムー(約31平方キロメートル)を復元し、黄河口湿地の独自の復元モデルを模索した。「一回の復元で、自然遷移と長期安定をもたらす」という良好な修復効果が得られている。川、陸、浜、海の複合湿地生態系が形成されつつあり、黄河河口域の生まれ変わった湿地の生態系の真正性と完全性が一層強化されている。

「早く見て!ズグロカモメだ!餌を探している!」。黄河デルタ国家級自然保護区管理委員会の趙亜傑(Zhao Yajie)シニアエンジニアは、「ズグロカモメは『湿地の妖精』と呼ばれ、繁殖場所の選択に極めて厳しく、湿地の生態環境変化の指標種だ」と、水面を指さしながら述べた。この保護区では、ズグロカモメ、コウノトリ、ツルなどの重要な種が安心して暮らせるように、生息地の保護に力を入れている。

 近年、保護区の鳥類の種類と数が大幅に増え、保護区開始時の187種から現在の371種に増えた。 東アジア─オーストラリアと環西太平洋という2つの移動ルートの重要な中継地、越冬地、繁殖地となっており、コウノトリの世界的な重要繁殖地、ズグロカモメの世界第2位の繁殖地、ソデグロヅルの世界第2位の越冬地として、「鳥の国際空港」とも呼ばれる。

 現在、東営市では黄河口国家公園の創設を加速させており、計画面積は3523平方キロメートルで、そのうち陸域面積は1371平方キロメートル、海域面積は2152平方キロメートル。中国初の陸と海の統合型国家公園となり、大河規模のデルタの生態系保護・管理の「新モデル」をつくることが目標だという。

「今後、より多くの鳥が黄河河口域を好きになるに違いない。『渡り鳥』が『留鳥』になり、来たら二度と離れたくなくなる!」と、趙さんは笑いながら語った。(c)People’s Daily/AFPBB News