【8月27日 AFP】米航空宇宙局(NASA)の有人月面探査計画「アルテミス(Artemis)」の第一弾として実施される無人試験飛行「アルテミス1(Artemis 1)」ミッションの打ち上げが、今月末に予定されている。

 アルテミス計画では、アポロ(Apollo)月面探査が最後に実施された1972年以降で初めて、人を運べるカプセル型宇宙船を月に送り込む。

 最初のミッション、アルテミス1号は無人の試験飛行で、特に注目されるのは、新しい大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」の初打ち上げだ。SLSは、世界最強のロケットとなる。

 SLSは、カプセル型有人宇宙船「オリオン(Orion)」を月の周回軌道に投入する予定。オリオンは宇宙空間に42日間滞在した後、地球に帰還する。

 2024年からは、宇宙飛行士が実際にオリオンに搭乗する予定で、早ければその翌年には米国人飛行士が再び月面に降り立つ見込みだ。

■月のプール

 米テキサス州ヒューストン(Houston)のジョンソン宇宙センター(JSC)には、宇宙飛行士訓練用の巨大な水槽がある。全長約60メートル、幅約30メートル、深さ約12メートルのこの世界最大の屋内プールには現在、部分的に黒い幕が張られている。

「無重量環境訓練施設(NBL)」と呼ばれるこのプールの一方には、国際宇宙ステーション(ISS)の実物大模型が沈められている。

 もう一方では、プールの底に月面環境を再現する作業が進められており、観賞用水槽のレイアウトを手掛ける企業が作製した巨大な模造岩が配置されている。

 AFP取材班が施設を訪れた日は、技術者とダイバーが月面での台車の移動を試行していた。

■新たな黄金時代

 プール内での訓練は、最大6時間続く場合もある。

 仮想現実(VR)ヘッドセットを装着した宇宙飛行士は、アルテミス計画の着陸地点として予定されている月の南極域での暗闇を想定した歩行訓練を行っている。月の南極域では、太陽が地平線上に現れることがほとんどないため、常に暗い陰に入った状態で視界が悪い。

 施設ではまた、オリオン宇宙船のレプリカが使われている。オリオンは4人乗りで、居住部分の容積はわずか約9立方メートルだ。

 オリオン計画の副マネジャーを務めるデビー・コース(Debbie Korth)氏は、AFPの取材に「宇宙飛行士らはここで、非常脱出訓練を何度も行います」と語る。

 10年以上にわたりオリオンに取り組んできたコース氏は、センターの誰もが月への帰還とNASAの未来に心を躍らせていると語る。

「間違いなく、新たな黄金時代の到来を感じます」 (c)AFP/Lucie AUBOURG