【8月17日 東方新報】8月2日夜、米下院のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)議長が電撃訪台し、世界中を騒然とさせた。これによって米国はどのような利益を得るのか、日本はどう対応すべきなのかについて、元国会議員の浜田和幸(Kazuyuki Hamada)氏が取材を受けた。

 浜田氏の見方では、ペロシ氏の台湾訪問の主な目的は3つある。第一に、「中国からの脅威」に正面から向き合うことで、アメリカ民主党のきわめて不安定な中間選挙とその後の大統領選挙の不利な状況を打開しようとしている。中国はロシアと違い、政治・軍事面のみならず、経済面でも現在のアメリカ社会における最大の共通不安要素だ。この時期に、この危機の解決にコミットする強力な政治家が出現すれば、米国における民主党の人気は間違いなく高まるだろう。

 第二に、アメリカ経済の伝統的な国策でもある軍事産業への思惑だ。米国は、これまでのロシア・ウクライナ情勢において、ウクライナへの軍備の売却や、「貸与」によって大きな経済的利益を獲得してきた。今、台湾海峡の情勢が不安定になれば、中国政府の態度が強硬になり、近隣諸国が恐怖心を募らせ、その分、米国はアジアのより多くの国や地域への軍備の輸送のチャンスが増すことになる。ペロシ議長が台湾を離れた後、中国政府は台湾周辺の6に及ぶ地域で実弾演習を行い、日本を含む多くの国の安全保障上の不安を煽った。しかし、これはアメリカから期待され、望まれていることなのだ。

 第三に、台湾危機を日本の危機と定義することで、日本を巻き込むことも目的なのだろう。8月6日、7日、自民党議員と元自衛隊幹部が、「台湾有事が発生した」際に、日本は在台日本人の安全を守れるかを確認するためのシミュレーション訓練を行った。訓練の結果、日本の自衛隊は台湾危機に対応する能力をまだ備えていないとの結論に達した。ペロシ氏の台湾訪問と中国側の反応により、日本は中国からの脅威をさらに認識し、政治・経済面での日米協力の強化を求めるだろう。これこそ米国の狙いだ。

 中国側の対応について、浜田氏は台湾海峡問題が中国政府と米中関係のレッドラインに抵触するものであり、中国側の強硬な対応はやむをえないところがあるとみている。

 今年は日中国交正常化50周年にあたるが、日中関係は決して理想的とは言い難い。浜田氏は次のように指摘した。一方で、日中両国は歴史上悠久の文化と経済交流の関係があり、現在も貿易面では米国を超える関係を維持している。加えて、日本は、日中両国が相互に依存しているという疑いの余地のない事実を、受け入れることができず、メディアやソーシャルネットワークでも、中国に関するネガティブな情報が支配的だ。多くの人がこの事実を疑い、批判さえするのは、妙ではないだろうか?

 浜田氏は、現在の日中関係において、米国が非常にネガティブな役割を果たしているとみている。

 日本は長い間、中国と米国という2つの大国の間に挟まれ、他国からは想像もつかないような困難な立場に置かれてきた。しかし、それでも考えることをやめ、安易にどちらかの言い分を鵜呑みにしてはいけない。日本は単独でこの状況を変えることはできないが、米国の長所と短所を弁えた上で、近隣諸国・地域との対話を強化することにより、多元的モデルに沿った新しい可能性を模索することができる。これは、日本の国益と、世界のすべての地球人の利益に最も合致する選択肢だという。(c)東方新報/AFPBB News