【8月17日 東方新報】中国古代から近代までの史料、出版物、印刷物の版本を収蔵・展示する「国家版本館」が7月30日にオープンした。中国北部に位置する首都・北京市に本館、西部の陝西省(Shaanxi)西安市(Xi’an)、東部の浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)、南部の広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)に分館を設け、中国の文化遺産を東西南北に分散して受け継ぐ。

 国家版本館は全国の施設から史料を収集し、3年をかけて建設。本館「文瀚(ぶんかん)閣」は北京市の中軸線上から北にあたる燕山のふもとに位置する。出版物は計1600万冊余り、展示品は1万点以上に達する。

 オープン記念の企画展では、貨幣や文章、切手などにまつわる史料を展示。新石器時代の貨幣だった貝殻、神託に使われた甲骨文、秦朝の兵士が家族に宛てた現存する最古の木簡の手紙、北宋時代に発行された世界初の紙幣「交子」、清朝の1787年に発行された中国初の切手など、来場者が楽しく歴史を学べる展示品が並ぶ。

 版本館には碑文や古書、書画、青銅器など数多くの貴重な文化財が集積しており、劉成勇(Liu Chengyong)館長は「版本館は図書館、博物館、美術館、資料館など多種多様な機能を一体化しており、さまざまな角度から中国の歴史的変遷を学ぶことができます」と胸を張る。

 分館もそれぞれ固有の特徴を持っている。漢朝や唐朝の都・長安の歴史を受け継ぐ西安市の分館「文済閣」は、漢・唐の時代をほうふつとさせる雄大な建物が築かれ、シルクロードにまつわる史料などを保管している。南宋の都(当時の名は臨安)だった杭州市の分館「文潤閣」は、学問や文化が隆盛を極めた宋朝の史料などを鑑賞できる。海外との窓口として発展した広州市の分館「文沁(ぶんしん)閣」は、中国の伝統に海外文化が融合した嶺南文化や、海のシルクロードにまつわる史料を展示している。

 東西南北4か所に分散することで、災害時に貴重な文化遺産が逸失するのを防ぎ、互いに収蔵品を移管するバックアップ機能を持たせている。本館、分館はそれぞれの地で、中国文化の「遺伝子」を後世に伝えていく。(c)東方新報/AFPBB News