印パ分離独立で引き裂かれたきょうだい、75年ぶりに再会
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【9月5日 AFP】インドのシカ・カーンさんは、パキスタンに住む兄サディク・カーンさんと75年ぶりに再会した。しわが刻まれた頬には喜びの涙が伝った。2人が顔を合わせたのは、1947年のインド・パキスタンの分離によって生き別れて以来だった。
シーク教徒のシカさんがサディクさんと別れたのは、生後わずか6か月の時だった。
英国による植民地支配が終わり、インドとパキスタンは分離独立。宗教間の衝突で100万人以上が殺害された。シカさんのように2か国間で引き裂かれた家族もいた。
シカさんの父親と姉は、衝突で命を落とした。当時10歳だったサディクさんは、なんとかパキスタンに逃れた。
シカさんは、インド側のパンジャブ(Punjab)州バティンダ(Bhatinda)にある簡素なれんが造りの家で「母はトラウマに耐えきれず、自ら川に飛び込んで亡くなった」と語った。
「残された私は、村人や一部の親戚によって育てられた」
シカさんは子どものころから、家族の唯一の生き残りである兄を捜したいとずっと思っていた。しかし、近所に住む医師が3年前に支援を申し出るまで、踏み出せずにいた。
数えきれないほどの電話をかけ、パキスタン人ユーチューバー、ナシル・ディロン(Nasir Dhillon)さん(38)の支援も受けた。
シカさんとサディクさんは1月、パキスタンのカルタールプール(Kartarpur)で、ついに再会を果たした。
2019年に開通したカルタールプール回廊は、インド側のシーク教徒にビザ(査証)なしで寺院への巡礼を認めており、離散家族にとって再会と和解の象徴となっている。
シカさんは、額に入った色あせた家族写真を握りしめながらこう話した。「初めて会った時は、抱き合って号泣した。インドとパキスタンは争いを続けている。わたしたちは政治的なことは気にしない」
イスラム教徒の農家ディロンさんは、不動産業も営んでいる。パキスタン人シーク教徒の友人、ブピンダル・シンさんと共に、自身のユーチューブチャンネルを通じて約300組の家族の再会を支援してきた。
ディロンさんはAFPに、「収入を得ているわけではない。内なる感情と情熱からの行動だ」と語った。「こうした物語は、まるで自分の祖父母の話のように思える。だから、年配の人たちの支援をしていると、私の祖父母の願いをかなえているような気持ちになる」
シーク教徒のバルデブ・シンさん(65)とグルムク・シンさん兄弟は、パキスタンでイスラム教徒として育てられた母親違いの姉ムムターズ・ビービーさんを受け入れることを少しもためらわなかった。
ビービーさんは赤ん坊の時、暴動で亡くなった母親の横にいるところを発見され、イスラム教徒の夫婦に引き取られた。
ビービーさんの父親は妻と娘が死亡したと思い、慣習に従って妻の姉妹と結婚した。
シンさん兄弟は、パキスタンに思い切って電話をかけたおかげで、姉が生きていることを知った。ディロンさんのユーチューブチャンネルの支援もあった。
シンさん兄弟とビービーさんは今年、ついにカルタールプール回廊で会った。お互いの顔を見ることができ、3人は泣き崩れた。
ビービーさんは、パキスタン側パンジャブ州の都市シェイクプラ(Sheikhupura)でAFPの取材に応じた。「(弟たちのことを)聞いた時、神のおぼしめしだと思った。ご意思に従えば祝福される」と語った。
「生き別れた家族を見つけることができて幸せだ。私の分離は終わった。とてもうれしい」 (c)AFP/Abhaya Srivastava with Zain Zaman Janjua in Faisalabad, Pakistan