【8月17日 AFP】枝には熟し過ぎたヤシの実が収穫されずに放置され、地面には腐った実が散らばる──マレーシアのアブラヤシ農園は深刻な人手不足に陥っており、収穫が滞っている。

 マレーシアは、世界第2位の食用油生産国だ。農園では長年、重労働であるヤシの実の収穫をインドネシアからの出稼ぎ労働者に頼ってきた。

 新型コロナウイルスの感染対策で長期間にわたり国境が封鎖され、外国人労働者の数はすでに減少していた。それに加え、インドネシア政府が7月、新規労働者の渡航を禁止したことにより、事態は悪化している。マレーシアが出稼ぎ労働者を保護するという合意を守っていないためだとしている。

 マレーシア中部スランゴール(Selangor)州イジョク(Ijok)に120ヘクタールの農園を所有するスザイディー・ラジャンさん(47)は「いつもは月に2回収穫をしている。しかし、人手不足で今では月1回が限度だ」とAFPに語った。

 6人の外国人労働者が必要だが、4人しかいない。スザイディーさんは自分で農園までトラックを運転し、ヤシの実を積み込んでいる。

 パーム油は物議を醸してきた。マレーシアとインドネシアの2か国が世界のパーム油生産の85%を占めているが、環境保護活動家は両国が森林破壊を助長していると非難している。

 急速な農園開発で希少動物の生息地が破壊されている他、外国人労働者に対する虐待や不当な扱いもあるという。

 だが、パーム油はマレーシアの主要産品で、自国よりも稼げることから外国人労働者を引き寄せ続けてきた。

 農園所有者の団体は、現時点で約12万人の労働者が不足しているとみている。

 ズライダ・カマルディン(Zuraida Kamaruddin)プランテーション産業・商品相は先月、ヤシの実を収穫できなかったことでパーム油産業は今年1~5月に104億6000万リンギット(約3100億円)の損失が出たと述べた。

 マレーシア国内に今もいるインドネシア人労働者の仕事は増えている。

 インドネシア人のサンさんは、「普段は5人が1チームで働いていたが、今は2人だけだ」と、収穫しながら語った。もう1人の男性がそれを手押し車に載せた。

「5人の時は1か月200トンを収穫していたが、今はわずか80トンだ」 (c)AFP/M. Jegathesan