【8月14日 AFP】仏風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)のローラン・スリソー(Laurent Sourisseau)編集長が、英作家サルマン・ラシュディ(Salman Rushdie)氏に対する襲撃を「死刑を宣告するファトワ(宗教令)を正当化するものなど何もない」と非難した。

 同紙は2015年にイスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の風刺画を掲載したことを理由に本社が銃撃を受け、12人が死亡した。

 ラシュディ氏は12日、米ニューヨーク州での文芸イベントに出席中、ステージに乱入した男に襲われ、首を刺された。同氏は1988年の著作「悪魔の詩(Satanic Verses)」が一部のイスラム教徒から預言者ムハンマドに対する冒涜(ぼうとく)とみなされ、当時のイラン最高指導者ルホラ・ホメイニ(Ayatollah Khomeini)師からファトワを受けていた。

 スリソー氏は12日、ウェブサイト版の社説で「これを書いている時点では動機は分からない」としながらも、「あえてリスクを冒して言えば、(容疑者は)恐らくイスラム教徒であり、1989年にホメイニ師がサルマン・ラシュディに対して死刑を宣告したファトワの名の下に実行したのだろう」との見解を示した。

 また「考える自由、内省する自由、自己表現の自由などは、神とそのしもべにとって何の価値もない」として、イスラム教がそうした価値を否定するのは信者に対する支配を脅かすからだと批判した。

 スリソー氏は「誰に対するものであっても、死刑を宣告するファトワを正当化するものなど絶対にないということを、繰り返し強調していかねばならない」と述べた。

 また、スリソー氏は仏週刊紙ジュルナル・デュ・ディマンシュ(Journal du Dimanche)に対し、このような襲撃の脅威にさらされている人間は決して警戒を解くことができないと語った。

 2002年まで身を隠していたラシュディ氏が日常を取り戻すよう願っていたとする一方、「残念ながら、ファトワの影響下にありながら他の人々と同じように生活することはまず不可能だ」と述べた。

 スリソー氏自身もイスラム過激派の脅威にさらされており、シャルリー・エブド紙の同僚数人と同様、現在も警察の保護下で暮らしている。そうした生活について「常に攻撃や襲撃の可能性を念頭に置かなればならない」「そうした状況下にある人々にとって年月は関係ない」と語った。(c)AFP