【8月12日 AFP】北朝鮮が10日に開いた全国非常防疫総括会議で、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong un)朝鮮労働党総書記の妹の金与正(キム・ヨジョン、Kim Yo jong)朝鮮労働党副部長は、正恩氏が新型コロナウイルス流行中に高熱を出していたことを明らかにした。

 朝鮮中央通信(KCNA)の11日の報道によると、会議で正恩氏は新型ウイルスとの闘いでの「勝利」を宣言。朝鮮中央テレビ(KCTV)の放送では、演説した与正氏が、正恩氏は防疫戦の最中に「高熱で苦しんだ」が国民への思いから休養を拒んだと語ると、涙を流す当局者たちの映像が映された。

 北朝鮮は新型ウイルス感染者を「熱病患者」と呼んでおり、検査体制が十分でなく感染者を確認できないことがその理由とみられる。国営メディアによると、熱病患者の数は480万人近くに上ったが、死者は74人のみで、致死率は0.002%。新規感染は7月29日以降、公表されていない。

 KCNAによると、正恩氏はこれを「世界の公衆衛生史上、前例のない奇跡」だと称賛。会場からは大きな拍手が沸き起こった。

 KCTVが与正氏の演説を放送するのは初めて。北朝鮮が正恩氏の新型ウイルス感染を示唆したのも初めてだった。与正氏は演説で、同国の新型ウイルス流行は韓国により引き起こされたものだと非難し、「報復」を宣言した。

 韓国・梨花女子大学(Ewha Womans University)のレイフエリック・イーズリー(Leif-Eric Easley)准教授は、北朝鮮による対コロナ「勝利」宣言について、経済強化や核実験の実施といった他の優先事項を進展させたい意向があるとみている。

 イーズリー氏は「金与正氏の好戦的な発言は、コロナ流行の再燃時には韓国にその責任を負わせる意向であること、北朝鮮が次に行う軍事的な挑発行為を正当化するものであることから、懸念すべきものだ」と指摘した。(c)AFP/Claire LEE