【8月11日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)前米大統領は10日、自身の一族が経営する企業の不正疑惑をめぐりニューヨーク州当局が行っている調査のための宣誓証言に臨んだが、黙秘権を行使して質問への回答を拒否した。トランプ氏に対しては司法当局の調査や捜査が相次いでおり、2日前には米連邦捜査局(FBI)により家宅捜索を受けていた。

 ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ(Letitia James)司法長官は、トランプ氏一族が経営する企業トランプ・オーガニゼーション(Trump Organization)が、銀行融資を申請する際に不動産の価値を過大評価した一方、納税額を減らすため税務当局には過少申告した疑いについて、調査を行っている。

 トランプ氏はこの日、宣誓証言のためにニューヨークにある州司法長官事務所に出頭。その後出した声明で、法律顧問の助言に従い、合衆国憲法の修正第5条で定められた黙秘権を行使したことを明らかにした。憲法修正第5条は、当局の取り調べを受ける個人が自己負罪(自己に不利益な供述を強要されること)を避けるために黙秘権を行使することを認めている。

 トランプ氏は、自身の家族や周辺の人々が「魔女狩り」の対象となっていることから、黙秘権の行使以外に「選択の余地はない」と説明。「もし私の中に迷いがあったとしても、FBIがこの宣誓証言のたった2日前の月曜(8日)に私の自宅であるマーアーラゴ(Mar-a-Lago)を家宅捜索したことで、迷いは一掃された」と述べた。

 FBIは家宅捜索の理由を公表していないが、米メディアによると、トランプ氏が退任後にホワイトハウス(White House)から許可なく持ち出した機密文書に関連するものとみられる。

 一方、ジェームズ長官が行っているのは民事調査であるため、不正行為の証拠が見つかった場合、トランプ・オーガニゼーションに対して損害賠償を請求することはできるが、刑事責任を問うことはできない。

 トランプ家は同社による不正行為を否定。トランプ氏は、調査は政治的な動機によるものだと主張している。(c)AFP/Maggy DONALDSON