【8月17日 AFP】インド北部ウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)州の小さな町マリハバード(Malihabad)。カリーム・ウッラー・カーンさん(82)は毎朝、夜明けと共に起きて祈りをささげると、樹齢120年のマンゴーの木まで約1.5キロの道のりをゆったりした足取りで歩いて行く。カーンさんは、この木から300種以上のマンゴーを生み出すことに成功した。

 マンゴーの木に近づくにつれ、カーンさんの足取りは速くなる。眼鏡越しに枝を見つめる目は輝きを増す。葉を優しくなで、実の香りを吸い込み、熟しているかどうか調べる。

「この木は何十年も焼けるような日差しの下で懸命に働いてきた私への御褒美だ」と、カーンさんは自身のマンゴー園で語る。

「一見、単なる木にすぎない。しかし、心の目を通じて見ると、木であり、果樹園であり、世界最大のマンゴーの集まりでもある」

 学校を中退したカーンさんが、マンゴーの新種を作るため、接ぎ木を試み始めたのはまだ10代の時だった。

 1本の木から七つの新種を実らせたが、嵐で木が倒れてしまった。

 しかし、この木は1987年以降、味や食感、色やサイズが異なる300種類のマンゴーを生み出してきた。樹齢120年の木が、今ではカーンさんの誇りと喜びの源となっている。

 カーンさんは初期の品種の一つを、インド映画界「ボリウッド(Bollywood)」のスター、アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン(Aishwarya Rai Bachchan)にちなみ「アイシュワリヤー(Aishwarya)」と名付けた。アイシュワリヤーは今でも「最高傑作」の一つだ。

「アイシュワリヤー種は、本人と同じくらい美しい。1個の重さは1キロ以上あり、皮は赤い色味があり、とても甘い」

 カーンさんのマンゴーの品種には、インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相やクリケット選手サチン・テンドルカール(Sachin Tendulkar)さんにちなんだものもある。